時代劇『イ・サン』には、王宮で働いている様々な人たちが登場する。その中で、ハン・ジミンが演じているソン・ソンヨンは図画署(トファソ)の茶母(タモ)である。図画署というのは朝鮮王朝の公式的な行事を描写する絵を作る部署である。
【関連】悪女にも意図があった!!『イ・サン』の女性たちの衣装をチェック!!
その中でソン・ソンヨンは画員たちの補助をする茶母となっており、同じく茶母の先輩であるチョビ(イ・イプセ)にいつもいじめられたりしている。それでもソン・ソンヨンは茶母として立派に仕事をこなしていて、いつかは図画署の正式な画員になることを目指していた。
このように『イ・サン』でソン・ソンヨンが象徴している茶母という存在。これは本来どういう立場だったのだろうか。
朝鮮王朝では厳格な身分制度が採用されていたが、貴族階級に該当する両班(ヤンバン)の屋敷では、低い身分の人たちが雑役を担っていた。その中で、お茶を受け持っていたのが茶母であった。
また、王宮の中で女官に従って補助的な仕事をしていたのも茶母だ。歴史的に見ると、同じ雑役の中でも茶母の仕事は一目置かれた。水汲みなどの単純作業とは違って、専門の知識などが必要だったのだ。
韓国時代劇で茶母の存在を有名したのはハ・ジウォンが主演した『チェオクの剣』であった。このドラマでは茶母が女性捜査官になっていたのだ。
朝鮮王朝でも茶母の中から優秀な女性を選んで、事件の捜査の補助をさせることがあった。なぜかというと、捜査官が男性だけだと女性が関わる事件に対応できないからだ。とはいえ、女性の捜査官を採用するわけにもいかなかった。儒教社会は男尊女卑が顕著で、女性を職員にすることは難しかったのだ。
あくまでも補助的な役割のために茶母が使われたということだ。それでも、女性の容疑者を取り調べるときに茶母の存在は不可欠であり、いつしか「茶母」という名称は女性刑事の代名詞になったりしていた。
これから韓国時代劇を見るときも、かならず茶母が登場するはずだ。その存在にも大いに注目しておこう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】『イ・サン』で息子が母親から「早く後継ぎを!」と催促される場面に注目!
前へ
次へ