テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『イ・サン』では6月7日に第16話がオンエアされたが、面白いシーンがあった。それは、キョン・ミリが演じる恵嬪(ヘビン/歴史的には恵慶宮〔ヘギョングン〕と称されている)がイ・ソジンの扮するイ・サンに会う場面だ。そのとき、恵嬪は息子に対して「早く世継ぎを!」と催促するのである。
【関連】悪役女優キョン・ミリが『イ・サン』で演じた善人キャラ恵慶宮とは?
母親がそう言いたくなる気持ちはよくわかる。すでに息子は成人していたからだ。
史実を見ると、恵嬪がイ・サンを産んだのは17歳のときであった。一方、当のイ・サンの家族状況はどうなっていたのか。
時代劇『イ・サン』でイ・サンの妻になっているのは、パク・ウネが演じる嬪宮(ピングン)である。この嬪宮は1753年に生まれており、イ・サンより1歳下だ。そして、2人は1762年に結婚している。
『イ・サン』の第16話が描いている時代は1770年代前半になっているので、イ・サンも嬪宮も立派な大人になっている。それなのに2人には子供がまだいなかった。
当然ながら周囲は本当に心配したはずだ。なにしろイ・サンはじきに国王になる立場であり、後継ぎの男子は絶対に必要だからだ。それゆえ、恵嬪は息子を訪ねて後継ぎを催促したのである。
歴史的に見ると、嬪宮は生涯にわたって子供を産まなかった。彼女はイ・サンが即位した1776年に孝懿(ヒョイ)王后になっているが、結局はイ・サンとの子供に恵まれなかった。
それでも彼女はとても性格が良くて、王宮では周囲の誰からも尊敬された。
朝鮮王朝には合計すると42人の王妃がいたが、その中で性格が最も優れていた王妃だと称された。まさに「聖女」とも呼ばれたのだ。また、姑の恵嬪に対しても、心から親孝行を尽くし、嫁としてできることを全てやり遂げた。
『イ・サン』においても嬪宮は素敵な女性として描かれており、それはまさに史実が記録する通りだ。たとえ子供には恵まれなかったとしても、人間的には最高の女性だったのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】【歴史の裏側】若き日のイ・サンを徹底的にいじめた親族は誰なのか?
前へ
次へ