ドラマ『トンイ』で主役のハン・ヒョジュが演じたトンイは史実で淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)のことだ。彼女は粛宗(スクチョン)の側室だったが、実際に張禧嬪(チャン・ヒビン)に会ったのは仁顕(イニョン)王后が廃妃にあった後である。つまり、1689年以降ということになる。
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しかし、ドラマ『トンイ』では、主人公のトンイは子供のときに張禧嬪と会っていた、という設定になっていた。しかも、トンイが王宮で奉職するようになってからも、すぐに張禧嬪と面会している。つまり、史実よりもずっと早く2人はドラマでは知り合っていたのだ。
ここで重要なのは、張禧嬪が早くもトンイのことをとても注目していたことだ。『トンイ』の第7話と第8話で、そのときのシーンを再現してみよう。
張禧嬪はトンイを気に入って自室に招き入れた。
ただし、トンイは粛宗の寵愛を受ける張禧嬪に対して恐縮してしまって、どこか落ち着かない。すると、張禧嬪がすぐにトンイを誉めた。
「澄んでいる。瞳の輝きがいい」
「エッ?」
「奴婢(ぬひ)とは思えないような才気と気品がある」
「めっそうもないことです。なぜ私のような者にそういうお言葉をくださるのですか」
トンイがそう言うと、張禧嬪は有名な詩の一節を暗唱し、「続きの詩を詠んでみよ」と語りかける。トンイがその続きを詠むと、張禧嬪は大いに納得した。
「やっぱり私の目は正しかった。文字が読めると思っていた」
こうしてトンイに対する評価を高めた張禧嬪は、トンイと別れたあとに侍女に言った。
「私はあの子が気に入った。大事なことに命をかけて、なんでもやり抜く子だ。頭もいい。ぜひ、あの子について調べてくれ」
以上のように張禧嬪はトンイに強く興味をもった。それは、トンイも同じだった。彼女は張禧嬪に強いあこがれを抱くようになった。
実際、ドラマ『トンイ』では、前半の一定の期間まではトンイと張禧嬪の関係が良好であった。そんな蜜月がやがて崩れていき、ドラマの後半では険悪な間柄になっていく。このように大きく2人の関係が変化するところもドラマ『トンイ』の大きな見どころだった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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