テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『帝王の娘 スベクヒャン』では、太子ミョンノンが物語を大きく動かしている。
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彼は本来、東城王(トンソンワン)の実子だった。しかし、東城王が暗殺されたあと、後を引き継いだ武寧王(ムリョンワン)が、自分の息子と東城王の実子を入れ替えた。こうして、ミョンノンは武寧王の息子となって太子に任命されたのだ。
この「入れ替え」は、『帝王の娘 スベクヒャン』の重要な人物設定だ。しかし、実話は違っている。ミョンノンは正真正銘、武寧王の実子だった。そこがドラマとは大きく違っているのである。
このミョンノンは、『三国史記』によると、学識にとても優れていて、正しい決断力があったと称賛されている。人格も申し分なかった。まさに、太子として国王を継ぐ資格があったというわけだ。『帝王の娘 スベクヒャン』でもチョ・ヒョンジェが思慮深くミョンノンを演じているが、それは史実に合ったキャラクターだったのである。
太子のミョンノンは、武寧王が523年に亡くなったあと、百済(ペクチェ)の26代王として即位した。
国王になってからも善政を行なって人々から尊敬を集めた。それゆえ、聖王と呼ばれるようになった。「聖」と尊称されるほど偉大な国王だったのだ。
実は、この聖王は日本と大変ゆかりがあるエピソードを持っている。
果たして、それは何なのか。
なんと、聖王は日本に仏教を伝えた国王なのである。
それは552年のことだった(538年だったという説もある)。
仏教に深く帰依(きえ)していた聖王は、日本の朝廷に仏像や経典を贈った。それは、百済が日本と良い関係を築きたいという強い意思表示でもあった。
結果的に、聖王の贈り物は、日本で仏教が信奉されていく契機になった。ちなみに、聖王は日本では聖明王と称されている。
そんなふうに日本とも深い関係があった聖王という有名な国王。『帝王の娘 スベクヒャン』では、若き日の姿をチョ・ヒョンジェが堂々と演じている。物語の後半に向けて彼の演技も本当に楽しみだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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