テレビ東京で放送中の『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』で、ペ・ジョンオクが演じる絶対権力者の大王大妃(テワンテビ)に歯向かう対抗勢力の象徴となっているのが、趙(チョ)大妃(テビ)である。チョ・ヨニが演じている。
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大妃というと国王の母を意味しているが、彼女は哲宗(チョルジョン)の実母ではない。
実は、哲宗の前に即位していた憲宗(ホンジョン)の実母なのだ。
趙大妃の夫は、大王大妃の息子であった孝明(ヒョミョン)世子だ。彼は頭脳明晰であったが、残念ながら21歳で早世してしまった。その後、孝明世子の長男だった憲宗が24代王として即位して、趙大妃は名実ともに「国王の母」となった。
しかし、権力を得ることはできなかった。自分より上に「国王の祖母」となる大王大妃がいたからだ。やはり「母」より「祖母」のほうが強い。
大王大妃は当時の王朝を支配した安東・金氏(アンドン・キムシ)の一族の出身だ。一方の趙大妃は豊壌・趙氏(プンヤン・チョシ)の一族で、出身がまるで違った。
両一族は王宮内の覇権を争っていたので仲が悪かった。必然的に、大王大妃と趙大妃もお互いに牽制しあっていた。そのあたりは、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』でもたっぷりと描かれている。
しかし、大妃より大王大妃のほうが立場が強い。それで趙大妃は苦労したのだが、ついに彼女が絶大な権力を握るときがやってくる。それは、1857年に大王大妃が世を去ったときだった。
以来、王族女性の最長老となった趙大妃は影響力を大いに発揮した。それが一番顕著になったのは、1863年に哲宗が急死したときだ。哲宗には後継ぎがいなかったので、趙大妃は自分が指図できる高宗(コジョン)を即位させて、憎き安東・金氏の一族を没落させることに成功した。
こうして、あれほど自分を苦しめた亡き大王大妃に対して趙大妃は復讐を遂げたのである。『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』では、自分の思い通りにできないという冴えない大妃なのだが、史実での彼女は、後に権力者となった凄い女性だった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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