テレビ東京の韓流プレミアで始まった『ヘチ 王座への道』は、とてもテンポが良くてストーリーも面白い。序盤から画面に釘付けになってしまうが、このドラマで一番憎たらしいのがチョン・ムンソンの演じる密豊君(ミルプングン)だ。
【写真】『ヘチ』で密豊君を演じた俳優チョン・ムンソンの印象とは?
王族であり王位を継ぐ資格があるのだが、とにかく性格が悪い。平気で殺人を犯す悪いヤツなのだ。チョン・イルが演じるヨニングンも、結局は密豊君との壮絶な対決が避けられなくなるのだが、果たして密豊君は実在したのだろうか。
彼は『ヘチ 王座への道』の中で「直系の王族ではない」とされている。それがハンディになっているのだが、密豊君の歴史背景を詳しく見てみよう。
密豊君は、有名な昭顕(ソヒョン)世子のひ孫と言われている。
先祖の昭顕世子は仁祖(インジョ)の長男だったが、朝鮮王朝が清に屈服したときに人質になり清の首都に8年間軟禁されていた。ようやく1645年に故国に戻ったのだが、わずか2カ月で急死している。一説によると、昭顕世子と険悪になった仁祖が息子を毒殺したのではないか、と推測されている。
それだけではなかった。昭顕世子の妻が死罪となり、3人の息子も済州島(チェジュド)に流罪にされてしまった。そのときの三男が生き残り、三男の孫となったのが密豊君だった。
ドラマの中で密豊君は「本来なら王位を受け継ぐはずだった」と言っているが、それは間違いではない。なぜなら、王位継承権のトップの昭顕世子の直系のひ孫であったからだ。
しかし、昭顕世子が亡くなったあと、彼の弟が王位を受け継いで孝宗(ヒョジョン)になったので、以後は孝宗の直系の子孫たちが王位を受け継いでいった。
それでも、密豊君に王位がまわってくる可能性があった。なにしろ、世子(張禧嬪〔チャン・ヒビン〕が産んだ息子)には子供がいなかったからだ。
そうであるならば、密豊君も品行方正にして評判を良くすればいいのに、ドラマの中ではまったく逆で、とんでもないワルであった。
今後も『ヘチ 王座への道』では密豊君の悪行が続くことになるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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