奇皇后という女性は、ドラマではハ・ジウォンが主演して華々しい人生を歩んでいくのだが、史実では本当に謎が多い女性である。彼女は、下級官職の奇子敖（キ・ジャオ）の娘として生まれたが、それ以外の出自はあまりよくわかっていない。
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それでも、貢女（コンニョ）として中国に渡っていったということは事実だ。
この貢女とは果たしてなんだろうか。
高麗は、中国大陸を支配した元に侵略されて、元にまったく頭が上がらなかった。その末に元から何度も貢女を要求されていた。これは、若い女性を献上する制度のことだ。そして、奇皇后も元で大成功をおさめようとして高麗から旅立っていったのだ。
実際、貢女として元に行った女性は、家族に会うこともできないまま異国で寂しく暮らさなければならなかった。しかし、その中で奇皇后は耐え抜いた。
彼女が貢女として元に渡ったのは1333年のことだったが、美しかった彼女は高麗出身の官僚だった高龍普（コ・ヨンボ）に気に入られて、皇室付きの女性として大いに抜擢された。さらに、元の12代皇帝のトゴン・テムルに寵愛されて側室になることができた。
しかし、トゴン・テムルの正室だったタナシルリが恐ろしい女性だった。彼女は奇皇后に嫉妬して、奇皇后を激しく鞭で叩いたり、焼きごてを押し当てたりした。そんなふうに、イジメはエスカレートするばかりだった。
このイジメに奇皇后は耐えた。彼女は側室ながら将来は元の皇后に絶対になりたいという野望を持っていた。それだけに、タナシルリにどんなひどい目にあわされても、くじけるわけにはいかなかった。
それが、高麗から貢女として元に渡ってきた女性の意地であった。そのように耐えた彼女は、やがては皇后にまで昇格していくのであった。やっぱり、辛抱したからこそ、望みをかなえることができたのであった。
一方、タナシルリは、勃発したクーデターに加担したことを疑われて宮殿を追い出されてしまった。奇皇后はこうして大きなチャンスをつかんでいった。
文＝康 熙奉(カン・ヒボン)
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