イ・ヨンこと孝明世子(ヒョミョンセジャ)に扮したパク・ボゴムと、ホン・ラオンに扮したキム・ユジョンが共演した『雲が描いた月明り』。このドラマの中では、2人の関係はどのように描かれているのか。それを詳しく見ていこう。
イ・ヨンは将来の国王が約束された身分であったが、その世子を様々な面で世話をしたのが内侍府(ネシブ)にいる内官(ネグァン)たちであった。
内侍府とは、どんな組織なのか?
わかりやすく言えば、王族の食事を管理し、秘書役として王族の世話を全般的に見る官庁である。
それだけではなく、王族の命令を各部署に伝え、さらには、門番をして王宮の護衛まで引き受けている。とても多忙な組織であった。
原則的に、内侍府の内官は宦官(かんがん/去勢された男子の官僚)である。
そういう内官に女性のホン・ラオンがなるというところが、『雲が描いた月明かり』の重要な設定になっていた。
内官は王族にピッタリ寄り添うので、イ・ヨンとホン・ラオンがいつも一緒にいるのは、なんら不思議はない。
ただし、内侍府の内官になるときには、「本当に去勢された男子であるか」を厳しくチェックされるので、女性がなりすますことはありえない。
確かに、ホン・ラオンが内侍府の内官になるのはありえない。しかし、ありえないことを起こしてストーリーを動かすのもドラマの醍醐味だ。
イ・ヨンのそばに仕えるホン・ラオンの存在そのものが、『雲が描いた月明かり』をとても面白くしていた。
そのホン・ラオンの父親は、史実で1811年に反乱を起こした洪景来(ホン・ギョンネ)だ。反乱の理由は、大凶作となって庶民が餓えているのに政権が重税を課したからである。
洪景来を首領とする反乱軍は10日ほどで7つの城を占領して勢いが良かったが、政府軍の反攻によって次第に窮地に追い込まれ、拠点となる城で長く籠城した末に制圧されている。そのときは、「洪景来の乱」に加わった約2千人が処刑されたと言われている。
さらに、イ・ヨンとホン・ラオンに関わる重要な人物がいる。それがドラマの中で茶山(タサン)として登場する丁若鏞(チョン・ヤギョン)だ。
彼は、ドラマの中ではホン・ラオンの恩師であり、悩み苦しむイ・ヨンに助言を与える師匠のような役割で登場した。
史実での彼は漢方薬の知識があり、1830年に病に倒れた孝明世子の診察を行なっている。しかし、丁若鏞はすでに孝明世子が亡くなっていることを悟った。
ドラマで共演するパク・ボゴムとキム・ユジョンの演技はまさに息ピッタリだった。他にも魅力的な俳優や女優が登場するが、何度見ても2人の演技に引き込まれてしまう。それほどすばらしい演技だった。
構成=大地 康
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