『TWELVE トゥエルブ』は、Disney+で配信されている壮麗なファンタジー・バトルアクションである。本作は東洋の伝承と西洋の幻想を巧みに融合させ、荘厳かつ華やかな世界観を築き上げている。物語の中心には、十二支の加護を受けし守護神たちがいる。
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彼らは人間の姿をまとい、表向きは穏やかな日常を過ごしながらも、はるか昔より絶えることなく続く“闇”との宿命的な戦いに身を投じている存在である。かつて彼らは人類を守るために己を犠牲にし、邪悪な力を封じ込めた。しかし、その封印は今や揺らぎ、世界は再び混沌へと傾こうとしているのである。
本作の最大の魅力は、十二支という誰もが親しみを抱くモチーフに、天使や悪鬼といった異文化の象徴を織り交ぜ、独自の神話的世界観を構築している点にある。古代の伝承が持つ重厚さと、現代社会のリアルな情景が交錯することで、物語は単なる娯楽を超え、観る者に普遍的な問いを投げかける。
映像美においても、壮大なスケール感と緻密なビジュアルが融合し、ダイナミックなアクションとともに圧倒的な没入感を生み出している。観客はまるで異界に踏み込んだかのような臨場感を味わうことになる。
数ある登場人物の中でも、異彩を放つのがパク・ヒョンシク演じるオグィである。彼はカラスを象徴するキャラクターであり、本来ならば天使の一員となるはずだったが、その道を踏み外し、闇の側へと堕ちてしまった存在である。
かつて封印の彼方に追放されたが、数千年の時を経て人間世界に復活。再び力を取り戻す過程で、忘れ去られていた記憶が蘇り、無慈悲なまでの力をもって天使たちへ立ちはだかる。その姿は光と闇の狭間で揺れ動き、物語に深い緊張感と悲劇的な美を添えている。
パク・ヒョンシクといえば、これまでも幅広い役柄を演じ分けてきた実力派俳優である。『花郎(ファラン)』では若き王子サムメクチョンを繊細に演じ、『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』では聡明にして孤高の世子イ・ファンを表現し、視聴者を魅了した。
さらに『ドクタースランプ』では、美容外科医ヨ・ジョンウという現代的な役柄を軽快かつ深みを持って演じ、人間的な葛藤を鮮烈に描き出した。
王や医師といった光を象徴する役を重ねてきた彼が、今回はあえて闇を体現する挑戦に臨んでいる点は実に象徴的である。その瞳には哀しみと怒りが交錯し、観客は単なる悪役としてではなく、運命に翻弄される人間的な姿をそこに見出すことができる。
常に新たな役柄に挑み続けるパク・ヒョンシク。その歩みは、光と影を自在に往来する役者としての真価を示している。『TWELVE トゥエルブ』における彼の演技は、壮大な世界観とともに観客の心に深く刻まれるに違いない。
作品全体が放つ幻想的な輝きの中で、オグィという存在はまさに闇を抱えた星のように妖しく輝き、その姿は長く人々の記憶に残るだろう。
◆『TWELVE トゥエルブ』概要
放送局:KBS (2025年)
出演者(役名):マ・ドンソク(テサン)、パク・ヒョンシク(オグィ)、ソ・イングク(ウォンスン)、イ・ジュビン(ミル)、コ・ギュピル(ドニ)、カン・ミナ(カンジ)
監督:カン・デギュ(『担保』『ハーモニー 心をつなぐ歌』など)
脚本:キム・ボンハン(『国際捜査!』など)
配信情報:Disney+のスターで独占配信中
文=大地 康
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