冬の北京オリンピックでは世界最高のアスリートが熱い闘いを繰り広げているが、33年前の9月のときもソウルでオリンピックが開催されて韓国全土が沸いていた。
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そんな時期の若者たちの恋と友情を描いていたのが『恋のスケッチ~応答せよ1988~』だ。「応答せよシリーズ」は全三部作なのだが、その最後を飾った傑作である。
舞台になっているのはソウルの双門洞(サンムンドン)という下町。ここに住む四つの家族の暮らしぶりが克明に再現されているが、韓国がようやく軍事政権を終わらせて民主化された時代の息吹が臨場感あふれるエピソードとともに描写されていた。
このドラマを見ていると、本当に韓国の「情が厚い社会」を感じ取ることができる。特に顕著な特徴をピックアップしてみた。
・各家庭が作った料理を近所にいつも配っていた
・誰かが病気やケガをしたときは隣同士が家族のように助けあった
・横丁がみんなで高校生の子供たちの面倒を見ていた
・掲載電話がない時代なのに情報は一気に各家庭に届いていた
・パク・ボゴムが演じた天才棋士をみんなで心から応援していた
・父親同士と母親同士の集まりが年中あって近所付き合いが濃厚だった
こうした人間関係が濃密に描かれていたが、同時に、笑いが尽きないコメディーの名作でもあった。
特に、異彩を放っていたのが大家の妻に扮していたラ・ミランだ。彼女の演技には笑いが止まらなかったが、一番の傑作だったのは、全国のど自慢の地域予選に出たときの場面だ。
独特の振り付けで自慢の声を披露しようとしたら、バックに流すテープを間違えてしまって、「タマゴはいらんかねえ~」というタマゴ売りの呼び声が流れてしまった。
あわてたラ・ミランが、不合格になっても歌をやめない懲りない姿が本当におかしかった。いま思い出しても、韓国ドラマ史上に残る珠玉の珍場面であったと言える。
それも含めて、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』はソウル人情喜劇としても最高のドラマであった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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