ドラマ『イ・サン』はなぜ正祖の毒殺説を採用しなかったのか

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『イ・サン』というドラマは、正祖(チョンジョ)という名君を主人公にして、その国王の生き方を真摯に取り上げた作品だった。

主人公を演じたイ・ソジンの演技も本当に良かった。彼が扮したことで、ドラマの中の正祖は立派な国王として存在感があった。

実際の正祖も、政敵が多い中で苦労して業績を挙げているが、ドラマもフィクションの要素を加えながら根本的には史実に沿って正祖の人生を誠実に描いている。だからこそ、名君の生き様が多くの感動を呼び起こしたのだ。

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ただし、史実とドラマでは根本的に違っている部分がある。それは、正祖が晩年になって病で倒れる局面だ。

イ・ビョンフン監督は、悲劇的な終わり方を好まない人だ。それによって、「正祖は最後に毒殺された」という、韓国人なら誰もがよく知る正祖毒殺説を採用しなかった。結局、『イ・サン』はハッピーエンドで終了している。これは、ドラマファンにとっては、好ましい結末だったといえるだろう。

『イ・サン』でイ・ソジンが演じた正祖

確証のない毒殺説

それでは、実際の正祖の最期はどうだったのか。

彼は1800年の6月に、急に高熱を発して倒れてしまった。その直前まではとても元気だったのだが、体調が急変して亡くなった。

必然的に、毒殺されたのではないか、と疑われた。彼はずっと政敵が多かったので、毒殺説には根拠があった。

特に、正祖の父親である思悼世子(サドセジャ)の餓死事件に関与したという疑いで謹慎をしていた貞純(チョンスン)王后が、毒殺説の首謀者と目された。彼女には、裏で何かと怪しい動きがあった。

しかし、結局は真相がわからないままだった。

今までの韓国のドラマや映画を見ていると、正祖の毒殺説に則った作品が数多く作られている。それで、韓国の人には正祖毒殺説は有名になったのだ。

しかし、イ・ビョンフン監督は、確証のない毒殺説を使わなかった。それも、立派な見識の一つだと思える。

『イ・サン』というドラマがハッピーエンドに終わったので、最後まで安心して楽しめたのは間違いない。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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