名優のハン・ソッキュが英祖(ヨンジョ)に扮したドラマが『秘密の扉』だった。
特にこの作品は、英祖と息子のイ・ソン(思悼世子〔サドセジャ〕)の確執が克明に描かれていた。そして、全編にわたってミステリアスで緊迫感のあるストーリー展開になっていたが、当時の歴史背景を知っておくと、各場面の意味がさらにわかるようになる。
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たとえば、1724年に英祖が21代王になったが、英祖を支持する老論派が強くなり、対抗勢力の少論派が劣勢になった。しかし、少論派の救いとなったのが1735年に生まれた思悼世子であった。
彼は頭脳明晰で名君になれる素養があった。英祖は期待して思悼世子をわずか10歳で政治の表舞台に出したのだが、このときに思悼世子は老論派を批判してしまった。その段階から老論派は思悼世子を危険人物とみなし、彼の即位を阻む動きを執拗に見せるようになった。
もちろん、英祖は息子を信じようとしたのだが、思悼世子の素行の悪さが耳に入る度に心境が複雑になっていった。そこには、老論派が意図的に思悼世子の悪評を吹聴したという背景もあった。
結局、英祖は思悼世子に不信感を募らせていく……そうした心境の変化も『秘密の扉』ではストーリーに取り入れられている。
このドラマには、思悼世子と妻の恵慶宮(ヘギョングン)が言い争いをする場面がよく出てくる。恵慶宮は晩年に書いた著書の中では、思悼世子の素行の悪さを強調していた。それこそが、夫婦の仲が悪かったことの証明である。
『秘密の扉』には、多くの伏線が張りめぐらされているが、根本的には「英祖と思悼世子の親子の確執」「老論派と少論派の対立」「思悼世子と恵慶宮の夫婦仲の悪さ」などの問題がストーリーの中心になっていた。そうした事実に注目して『秘密の扉』を見れば、ドラマがさらに味わい深くなるだろう。
そして、ハン・ソッキュの名演技もすばらしい。彼が演じる英祖は実績がある国王らしく重厚だった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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