傑作時代劇『宮廷女官チャングムの誓い』を通して、韓国料理にとても興味を持った視聴者がさぞかし多いことだろう。韓国料理というと「キムチと焼肉」のイメージが強いけれど、ドラマを見ると自然の風味豊かな食材を多彩な調理方法で仕上げていくのが本当によくわかってくる。
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こうした韓国料理の最高の到達点が、『宮廷女官チャングムの誓い』にもひんぱんに登場する宮廷料理である。広い食卓にこぼれんばかりに並べられた垂涎の料理は、まさに圧巻だ。その宮廷料理がめざしているものは「薬食同源」という基本思想である。「食物は薬と同じ」という考え方が料理に生きているのだ。
なにしろ、宮廷料理の最大の目的は、国王をはじめとする王族の健康を維持することなので、野菜・肉・魚をバランスよく食べるための工夫が徹底的にほどこされている。それだけに、宮廷料理は究極のヘルシー料理と言えるだろう。
なお、『宮廷女官チャングムの誓い』を見ていると、キムチがまったく出ないことに気づいてくる。キムチといえば、韓国料理を最も象徴する漬物。それがなぜ出てこないのか。
実は、チャングムが実在した16世紀前半には、まだ朝鮮半島には唐辛子がなかったのである。もともと唐辛子はメキシコが原産地。それが、世界に広がるきっかけをつくったのがコロンブスだった。
15世紀の末に彼の新大陸発見が契機となって、タバコとともに唐辛子もヨーロッパに持ち込まれるようになった。それから長い時間をかけて唐辛子が日本や朝鮮半島にもたらされたのは16世紀末。チャングムが生きた時代より数10年後のことだった。
そんな事情があって、『宮廷女官チャングムの誓い』には唐辛子を使った料理がまったく出てこない。けれど、寂しいというわけではない。かえって韓国料理の多彩な調理方法が堪能できて、辛いだけが韓国料理でなかったことが心から実感できる。
そういう意味でも、『宮廷女官チャングムの誓い』は改めて韓国料理の真髄に気づかせてくれる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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