王宮に奉職している女官の中では、尚宮(サングン)と言う地位が一番高かった。正五品の品階をもらえる「働く女官」のトップだ。そんな尚宮の下に付いて実際の作業を担当するのが内人(ナイン)と呼ばれる身分の人たちだった。つまり、内人は尚宮の忠実な部下というわけだ。
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女官はほとんどの場合、幼い頃に宮廷に入るが、多くは18歳頃に内人に任命されていた。内人になれば、ようやく見習いから卒業だ。
しかし、身分は安定していなかった。様々な「女官の掟」があって、それに違反すると厳罰に処された。
たとえば、男性との恋愛の禁止だ。王宮内の女官は、立場上はすべて国王と結婚しているとみなされていた。それゆえ、その生活は厳格に制限された。
たとえば、女官が国王ではない他の男性と性関係を持てば、地位の高低に関係なく男女はすぐに斬首された。国王に対して不義を働いたという罪である。
もし女性が妊娠していれば出産後100日を経てから処刑された。この「100日」という日数は、産まれた子供に乳を与えるための執行猶予だった。そして、残された子供は奴婢(ぬひ)にされた。
女官たちを厳しく取り締まったのは、彼女たちが宮廷内の秘密と国家事情を熟知していたという事情があった。実際の問題として、国王ではない他の男と姦通したり寝床を共にすれば、大事な情報が外部にもれる危険性があった。また、男性も国王の女性に手を出したという不貞罪を問われて、結局は打ち首となった。
さらに、他の罰で宮廷から追い出された女性も、生涯結婚できないようにさせられた。それだけに、宮廷内にいる女官は、いかなる罰も受けないように常に緊張を強いられた。
そして、女官たちの口を堅く封じ込めるために行われたのが「火を放つ儀式」だった。これは毎年慣例の行事で、宮中入りした見習いの女官たちを立たせて、彼女たちの口に松明を持っていき、口を焦がした素振りを見せながら威嚇するというものだった。
女官たちには宮中は未知の世界であると同時に、怖い世界でもあった。国王をしっかりと奉り、言葉一つ一つにも細心の注意を払うように教育された。しかも、「火を放つ儀式」のような脅しがあったからこそ、女官たちは部屋に二人でいるときも外に聞こえないようにひそひそと話した。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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