テレビ東京の韓流プレミアで4月29日に放送された『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』の第17話では、チュ・サンウクが演じる李芳遠(イ・バンウォン)が、最大の政敵であった鄭道伝(チョン・ドジョン)を自らの刃で殺害する様子が描かれた。
【関連】18歳年下の日本人女性に“一目惚れ”。韓国俳優の結婚相手が「超美人」と話題
大河ドラマらしく非常に劇的な場面であったが、『朝鮮王朝実録』ではどのように記録されていたのか。1398年8月13日の記述を振り返ってみよう。
鄭道伝(チョン・ドジョン)が南誾(ナム・ウン)の妾の家で秘密会議を開いていることを察知した李芳遠と兵士は、南誾の妾の家を取り囲んだ。そのうえで、家に火をつけた。
鄭道伝の同志たちが驚いて家から出てきたが、ことごとく殺された。しかし、鄭道伝と南誾が見つからない。李芳遠が檄を飛ばした。
「絶対に探し出せ。かならず見つけろ!」
もはや深夜に近づいていた。隣家の住人が血相を変えて芳遠の前に現れた。
「私の家に隠れています」
こうして、寝室に隠れていた鄭道伝が見つかってしまった。彼が李芳遠の前に引き出されてくると、みじめなほど卑屈になって哀願した。
「どうか、殺さないでください。お願いですから、生かしてくれませんか」
情けなく命乞いする鄭道伝に向かって、李芳遠が冷淡に言った。
「お前はどうやったらこんな悪事を働くことができるのか」
そう憤慨した李芳遠は配下の者に命令して、見苦しい姿をさらしていた鄭道伝の首をはねさせた。また、南誾も鄭道伝と同様に首をはねられた。
以上が『朝鮮王朝実録』の記述なのだが、あくまでも政権を握った李芳遠の側からの書き方だ。彼に都合がいい形で正式な歴史書が書かれているのだ。
しかし、本当に誇りが高かった鄭道伝が、命が惜しいとはいえ、李芳遠の前でぶざまな姿をさらしたのだろうか。この点に関しては信憑性が疑われている。『朝鮮王朝実録』が描いた「李芳遠の前で命乞いする鄭道伝」という場面は、李芳遠が鄭道伝を殺した事実を正当化するような描写になりすぎている。勝者が都合よく記録を捏造した疑いがきわめて濃い、と言わざるを得ない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】『太宗 イ・バンウォン』にも登場。権力者・鄭道伝の破天荒エピソード
前へ
次へ