21代王・英祖(ヨンジョ)の治世は、政治的な転換と改革の意志を示したが、同時に、根強い噂に悩まされた。その噂というのが景宗毒雑説であった。
【関連】【『ヘチ』の真実】果たして世弟は本当に景宗の死に関係していたのか
1724年、英祖が即位した直後から、「景宗(キョンジョン)に出された蟹に毒が入っていたのではないか」という噂が流れるようになった。景宗は英祖の異母兄であり、子供がいなかったので、亡くなれば英祖が王位を継ぐ予定になっていた。それゆえ、「早く国王になりたくて異母兄を毒殺したのではないか」という噂が絶えなかったのだ。
当時の状況を見てみよう。
20代王の景宗が特に健康を悪化させたのは、1724年8月20日のことである。「朝鮮王朝実録」に記されたその時の出来事を振り返ってみると、8月20日の夜、景宗は胸と腹に激しい痛みを感じて医官の診察を受けた。彼がその日に食べたケジャン（蟹を醤油漬けにした料理）と柿が良くなかったと診断された。というのは、この組み合わせは医官の間でも最悪だと見なされていたのだ。
それならば、なぜ景宗はケジャンと柿を一緒に食べたのか。
ここで登場するのが英祖である。彼は景宗に「ぜひお召し上がりください」と勧めたのである。けれど、結果が良くなかった。景宗はとたんに具合が悪くなり、煎じ薬を処方され、安静を保った。そんな状況の中で、今度は英祖が景宗に人参茶を飲ませようとした。
これは医官が止めた。彼らの言い分は「この病状に人参茶はふさわしくない」というものだった。しかし、英祖は反論した。
「人参茶がからだにいいことは誰でも知っている」
こうして英祖は医官の反対を押し切って景宗に人参茶を飲ませた。
ところが、裏目になった。景宗の腹痛と下痢が悪化し、23日には下痢が止まらずに体力が衰え、24日には深刻な病状に陥った。そして、とうとう医官たちの尽力もむなしく、25日に彼はこの世を去った。
もしも英祖が、医官が反対した「ケジャンと柿」「人参茶」を景宗に差し上げなければ彼は助かっただろうか。ここに大きな疑惑が生じた。
(後編に続く)
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
■【関連】【イ・サンを陥れる罠?】『赤い袖先』で英祖は「蟹と柿」でなぜ驚愕したのか
前へ
次へ
.jpg)
