クォン・ユリが扮するファイン翁主(オンジュ/側室が産んだ王女)がヒロインとなっている『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』。ファイン翁主を死んだことにして葬式まで行なったのが高官のイ・イチョム(李爾瞻)であった。名優のイ・ジェヨンが演じている。
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このイ・イチョムは史実でどんな人物なのだろうか。彼を知るために、光海君(クァンヘグン)の時代に「党争」で優位に立っていた大北派について理解しておこう。
朝鮮王朝時代に「王宮の病巣」と言われたのが「党争」だ。これは、高官たちが派閥を形成して激しい主導権争いをしたことをさしている。
光海君の父親だった宣祖(ソンジョ)の時代に、派閥闘争は東人派が優勢で西人派が劣勢だった。しかし、東人派は内部の意見対立から南人派と北人派に分かれた。
その後は、北人派の天下になったのだが、宣祖の後継ぎをめぐって大いにもめて、北人派は大北派と小北派に分裂してしまった。このとき、光海君を支持したのが大北派であり、光海君の異母弟の永昌大君(ヨンチャンデグン)を支えたのが小北派だった。
1608年に光海君が即位すると小北派より大北派が優勢となった。この大北派の大物高官がイ・イチョム(李爾瞻)であり、一緒に結託したのがキム・ゲシ(金介屎)だ。キム・ゲシは悪女としてあまりに有名だが、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』では個性派女優のソン・ソンミが演じている。
史実では、イ・イチョムとキム・ゲシが陰謀をはかって永昌大君を1614年に殺害した。これによって、永昌大君を支持していた小北派は完全に勢いを失ってしまった。
しかし、「党争」の勝者は常に変化していた。天下を取っていた大北派だったが、虎視眈々と巻き返しを狙っていく人たちも多かった。そんな中で、イ・イチョムの栄華はいつまで続いたのであろうか。それは、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』を見ていれば、よくわかってくるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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