話題の韓ドラ時代劇『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』の主人公チョン・イルが演じたバウは、人前では言えない仕事をしていた。それは、明らかな誘拐だったからだ。
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しかし、誘拐した人から恨まれることはなかった。むしろ、感謝されるほどだった。それは、なぜなのか。
実は、朝鮮王朝の厳しい男女差別が根底にあった。
朝鮮王朝は儒教を国教に指定しているのだが、当時の儒教は人の身分の違いを認める思想を取りいれていた。わかりやすく言えば、明らかな身分差別を容認していたのだ。
特に、男尊女卑が顕著であり、女性は一度結婚すると、法的に再婚ができなかった。そのために、夫が死別したときも、未亡人は自由に再婚することが不可能だった。むしろ、未亡人が夫の後を追って自害した場合に「烈女」として褒め讃える風潮まであった。
こうなると、未亡人は本当に辛い。特に、20代の女性ならまだ若いので人生をやり直すこともできるのに、朝鮮王朝で行なわれていた厳格な身分制度では、未亡人は寡婦としてずっと暮らしていかなければならなかった。
そこで、出番が来るのがバウのような人間だ。
たとえば、寡婦に好きな男性がいて一緒に暮らしたいときに、バウが仲介役となって寡婦を布で包んで誘拐し、彼女が望むところに連れて行って再婚させるのである。そのとき、「包む」ことを韓国語で「ポッサム」と言う。それで、寡婦を誘拐する行為を「ポッサム」と呼んだのである。
『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』ではバウが人違いをして、クォン・ユリが扮しているファイン翁主(オンジュ)を間違えてさらってしまった。
彼女は高官イ・イチョムの息子と夫婦だったが、夫を早く亡くして未亡人だった。それなのに、突然知らないところに連れて行かれてしまったわけだ。
結局、バウが行なった「ポッサム」がその後の重大な事件の端緒になっていく、というのが『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』のメインのストーリーになっている。それは、朝鮮王朝時代の男尊女卑が生んだ奇妙な風習から生まれていた。現代では本当に考えられないような話だ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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