現代の韓国人にも根強い人気を誇る高句麗(コグリョ)。ソン・イルグクが主演したドラマ『朱蒙(チュモン)』は、その高句麗建国の始祖である東明聖王(トンミョンソンワン)の別名でもある。
高句麗が存在したとされる時代は紀元前。朝鮮半島最古の歴史書『三国史記』(1145年完成)には、その輪郭がおぼろげながら記録されている。
『三国史記』を解釈した歴史学者たちによると、朱蒙の母はドラマにも登場した柳花(ユファ)だということが定説になっている。
ただ、その父親がだれであるかという点では明らかにされていない。柳花は東扶余(トンプヨ)の王・金蛙(クムワ)と暮らしていた頃に卵を産んだとされている。
金蛙は部下に破壊もしくは捨てさせようとしたが、なぜか卵は無事だった。やがて、卵から朱蒙が生まれたという。
ドラマ『朱蒙』では、朱蒙はヘモスと柳花が愛しあい生まれた子という設定だったが、史実にはそれを決定づける根拠はないのだ。あるのは、「ヘモスと出会った」「ヘモスに軟禁されていた」というような記述だけである。
いずれにせよ、朱蒙は無事に成長し、7歳にして文武を兼ね備えた少年になる。東扶余では弓矢の名人を 「朱蒙」と呼んだことから、その名前を送られたと言い伝えられている。
しかし、金蛙には7人の王子がいて、朱蒙の才能をねたみ追い出そうと画策した。命の危険を感じた朱蒙は青年になった22歳の時、東扶余を出ることに。そして、自らの国を建てることを決心する。
紀元前37年には高句麗という国号を定め、自分の姓を高(コ)氏と名乗った。これが、史実に残された高句麗建国のいきさつだ。
高句麗はその後、約700年にわたって栄える大国だが、その建国のいきさつはかなり“ざっくり”しているのだ。朱蒙は紀元前19年に死去。息子の瑠璃(ユリ)(類利(ユリ))王から「東明聖王」の諡(おくりな)を贈られている。
なおドラマでは、朱蒙が“古朝鮮(コジョソン)の復興”を目指し奮闘するが、史実ではその古朝鮮が存在したのか自体、明らかになっていない。
初の朝鮮半島における王国と呼べるのは“衛氏朝鮮(ウィシチョソン)”で、こちらは中国・漢に滅ぼされている。『朱蒙』には歴史論争がつきまとったが、歴史資料が不足しているという点が、最大の原因のようだ。
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