テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、10月12日の第3話で驚くべき展開となった。クォン・ユリが扮するファイン翁主(オンジュ/側室が産んだ王女)が、生きているのに死んだことにされてしまったのだ。
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彼女はチョン・イルが演じるバウに人違いで「ポッサム」(善意の誘拐)されたのだが、亡くなった夫の父親であるイ・イチョム(イ・ジェヨン)が苦しい言い訳でファイン翁主が夫を追って自殺したという偽装を行なった。娘に会いたいと願った光海君(クァンヘグン)に、当のファイン翁主が失踪していることを知られたくなかったからだ。
この時のファイン翁主には、亡き夫の後を追って自ら死ぬことが称賛される雰囲気もあった。これは、朝鮮王朝時代によく起こっていた悪習が関係していた。
実は、儒教精神が濃厚に浸透していた当時は、「烈女不事二夫」という生き方が讃えられる傾向があった。これは「烈女は二人の夫に事(つか)えず」という意味で、「亡き夫の後を追うのは烈女の証」という風潮を示していたのだ。そんなふうに死んだ未亡人は誰からも「烈女」として称賛された。
儒教的な男尊女卑思想の最たるものなのだが、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』におけるファイン翁主も、そんな「烈女」の仲間入りをしたと思われてしまったのだ。
歴史的に「烈女」として有名なのが、英祖(ヨンジョ)の長女の和順(ファスン) 翁主だ。彼女は夫が急死したあとに断食を行なって、一切の食を断ってしまった。それは、夫の後を追って死んでしまおうという意思表示だった。英祖は和順翁主を溺愛していたので、彼女の断食をやめさせようとしたのだが、和順王女は絶対にやめなかった。その挙句に、死んでしまったのである。
こうした例があるほど「烈女」というのは名誉ある存在なのであり、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』でもファイン翁主は「烈女」になったと思われてしまったのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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