【歴史コラム】極端に衰えた英祖が300年の慣例を盾にイ・サンをどう救ったのか

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テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『赤い袖先』。9月19日の第13話では、イ・ドクファが演じる朝鮮王朝第21代王・英祖(ヨンジョ)がすっかり衰えていた。なにしろ、イ・ジュノが扮するイ・サンを呼びつけても、「何を言いたかったのか」がまったく思い出せない有様だった。

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史実でも、英祖は81歳になっていた1775年に自分の体力と記憶力の限界を悟っていた。それゆえ、彼は早くイ・サンに政治をまかせたくて仕方がなかった。そこで、英祖は1775年12月にイ・サンの代理聴政(テリチョンジョン/摂政のこと)を決定し、さらに、巡監軍(スンガムグン)をイ・サンの配下に付けた。

巡監軍は本来なら国王を守るのだが、その強力な軍隊をイ・サンが仕切ることになった。こうしてイ・サンの立場がますます強くなっていった。

これに対して、老論派が激しく抵抗した。彼らは敵対するイ・サンの権力が強くなることを警戒した。それは、イ・サンの即位を徹底的に阻みたかったからだ。当然ながら、イ・サンが巡監軍を動かすことは絶対に認められなかった。

しかし、英祖はまったくひるまなかった。それどころか、最後になって決定的な王命を出そうとした。そのときに根拠として出してきた実例が「巡監軍を東宮(イ・サンのこと)の配下にするのは300年も続く慣例だ」ということだった。

そう主張した英祖は、国王の行幸に同行する軍を王宮に待機させるという命令も出した。これは完全な脅(おど)しであった。「あまりに反対するようなら軍を出して拘束するぞ」という具合に圧力をかけたのだ。これで、反対派の重臣たちは恐れおののいてしまった。

『赤い袖先』ではイ・ドクファが英祖を演じた(NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2021MBC)

王位に就く道を開いた執念

結局、渋々ながら王命に従う意思を示した。強気を装っていた重臣たちも、国王に軍の介入を示唆されては、もう強気に出られなかった。

こうしてイ・サンの代理聴政が正式に決まって、彼は軍を支配する権限も与えられた。鬼に金棒である。極端に衰えた英祖であったが、最後は執念でイ・サンが王位に就く道を開いたのだ。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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