『赤い袖先』のキャスティングは、イ・ジュノ、イ・セヨン、イ・ドクファなど素晴らしい配役になっているが、王妃キム氏はチャン・ヒジンが演じている。従来ならこの役はクセのある演技派女優が演じることが多かったが、『赤い袖先』では優しさがにじみでる美人女優が扮していて、見事に先入観を覆してくれる。そういう意外性もとても興味深いことだ。
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そうやって新しいイメージで設定された王妃キム氏だが、史実ではどんな女性なのだろうか。
そもそも、21代王・英祖（ヨンジョ）の最初の妻は貞聖（チョンソン）王后であった。その彼女が1757年に亡くなった後、英祖が2年後に迎えた新しい妻が王妃キム氏だ。歴史的には貞純(チョンスン)王后と称されている。
注目すべきは国王と王妃の年齢差だ。2人が結婚したとき、英祖は65歳で王妃キム氏は14歳だった。なんと、年齢差は51歳もあった。当時の英祖の後継者だった息子の思悼世子(サドセジャ)より、王妃キム氏は10歳も年下だった。
それなのに、王妃キム氏と思悼世子は仲が悪かった。王妃キム氏は思悼世子の素行の悪さを英祖に知らせる役目を果たした。それで、英祖は息子を何度も呼びつけては、激しく叱責した。
王妃キム氏が思悼世子を嫌ったのは、彼女が当時の主流派閥の老論派の重鎮の娘だったからだ。思悼世子は老論派と対立しており、王妃キム氏は老論派を守る立場だったのだ。
こうして彼女は思悼世子を排斥する立場につき、英祖への告げ口をやめなかった。親子の関係に亀裂が走り、最終的に英祖は思悼世子に自害を命じた。それでも思悼世子は従わなかったので、英祖は息子を米びつに閉じ込めて餓死させた。その一部始終を10歳だったイ・サンは見ていた。それゆえ、彼は王妃キム氏のことをずっと恨んでいた。
しかし、『赤い袖先』の序盤では、イ・サンと王妃キム氏の関係は悪くなかった。物語が進むにつれて、両者の関係はどうなっていくのか。そうした関係の変化に注目したい。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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