ドラマ『イ・サン』を見ていると、イ・ソジンが演じるイ・サンと同じくらい出番が多いと思えるのが、ハン・サンジンが演じる洪国栄(ホン・グギョン)であった。ときには主役のイ・サンを上回るほどの存在感を見せており、洪国栄がいないとストーリーが進んでいかないという場面も少なくなかった。
ドラマと違って史実の洪国栄はどれほど力を持っていたのか。実際、国王になって国政改革に邁進したイ・サンが側近として一番頼りにしたのが洪国栄だった。
彼はイ・サンの母親の恵慶宮(ヘギョングン)とも縁戚関係があった。そういうこともイ・サンが心を許す理由になっていたことだろう。
実際、洪国栄は頭脳明晰でとても有能であった。それゆえ、イ・サンは何か新しいことを始めるときに迷わず洪国栄にまかせた。こうして洪国栄が持つ権力はどんどんふくらんでいった。
国王の秘書室長とも言える都承旨(トスンジ)になっただけでなく、様々な重要部署の責任者にもなり、もはや「王に次ぐ最高実力者」と称された。年上の高官ですら洪国栄を極端に畏怖するほどで、彼の名声は全土に響き渡った。
しかし、図に乗りすぎた。イ・サンの正妻である孝懿(ヒョイ)王后に子供がいなかったことに目を付け、自分の妹をイ・サンの側室に送り込んだ。それが元嬪(ウォンビン)・洪氏(ホンシ)なのだが、彼女はせっかく王宮に入ってきても1年ほどで亡くなってしまった。
この出来事をきっかけに、洪国栄の異常さが露見するようになった。なんと、妹の死の原因が孝懿王后にあると勘違いして、この王妃の毒殺をたくらむようになったのだ。
もはや常軌を逸していた。そんな事態を招いたのは、イ・サンがあまりに洪国栄を重用しすぎたことも関係している。
「権力を持つと豹変してしまう人物」
洪国栄がそういう人物であったことを見抜けなかったのは、イ・サンにとって反省すべきことかもしれない。史上に名高い名君も身内と言える側近を甘やかしすぎたようだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
前へ
次へ