テレビ東京の韓流プレミアで放送されている『イ・サン』は、8月7日の第59話で、イ・ソジンが扮するイ・サンの側室だった元嬪(ウォンビン)がこの世を去った。この悲劇は、1779年に実際に起こっている。
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史実を紐解くと、元嬪・洪氏は側室となってからわずか1年の時間を経て、永遠の眠りについた。彼女の生涯は、一瞬の光のように短かった。
実の妹の早すぎる死に、洪国栄(ホン・グギョン)の胸は、自らの選択への責任で締めつけられた。彼の心の中には、「私が妹を宮廷に送り、この運命を招いたのでは」という悔いが湧き上がる。その痛みは、本当に大きかった。
しかし、次第にその悔いは疑問へと変わり、「どうして、かつて輝いていた妹が突然この世を去ったのか」という疑念が芽生える。その疑念の先に、彼は孝懿(ヒョイ)王后の存在を感じ取る。
「もしや、王妃の策略により、妹は毒を受けたのでは」という疑念が、次第に洪国栄の心を占めるようになった。
彼の冷静さは霧の中に消え、真実と幻想の境界が曖昧となっていった。普遍の知識によれば、孝懿王后は暗黒の策略をめぐらす性質の持ち主ではなく、彼女の心の中は常に清らかで、朝鮮王朝の歴史の中でも特別な存在として讃えられていた。
また、イ・サンの祖母となる貞純(チョンスン)王后や母である恵慶宮(ヘギョングン)に礼を尽くしたことでもよく知られた。そんな女性が、他人の毒殺をたくらむはずがない。しかしながら、洪国栄はその真実を見失い、孝懿王后を妹の死の元凶と信じ込むのであった。
当時の洪国栄は絶大な権力を握っていた。彼はイ・サンに次ぐ絶対的な支配者になっていたのだ。そんな立場が彼を増長させて、「自分にはなんでもできる」という傲慢な気持ちを抱かせていた。それが度を越していって、今度は孝懿王后を極端に怨むようになっていったのである。
すでに見境がなくなっていた洪国栄は、孝懿王后に復讐する機会を狙った。こうして彼は危ない世界に入り込んでしまった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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