ドラマ『イ・サン』の前半においてイ・ソジンが扮したイ・サンとイ・スンジェが演じた英祖（ヨンジョ）の関係は、いつも愛情あふれる名場面として描かれていた。
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実際に、歴史的に2人の間柄は孫と祖父という血縁以上に深いものだった。それは、朝鮮王朝の統治として政治的な大問題が関わっていたからだ。
そんな2人の印象的な場面を思い出してみよう。
時は1775年、英祖は81歳になり、イ・サンは23歳の若者だった。朝鮮王朝の歴史には27人の国王が存在したが、英祖だけが80歳を越えて国王の座にとどまっていた。つまり、朝鮮王朝の歴史で80代の国王は初めてだったのだ。そのため、老齢による苦悩は他の国王には理解できないのも当然だった。
イ・サンは若き世孫（セソン／国王の後継者となる孫）として、英祖が何か困難に直面した場合には即座に王位を継承する準備を整えていた。しかし、何よりも英祖の衰弱が心配されていた。
1775年11月20日、英祖は重要な発表のために重臣たちを集めた。彼は脆弱な声で次のように述べた。
「気力が衰え、一つの政務を果たすことも難しくなってきた」
これは、英祖の本当の思いを表していた。彼は心身の衰弱を痛感し、もはや孫に王位を譲るべきだと考えていた。
そこで英祖は、重臣たちに向かって宣言した。
「今後は緊急ではない案件は世孫が決定し、急を要する案件は余と世孫の協議の上で決定する」
これは実質的には、世孫に摂政の役割を与えることを意味していた。しかし、多くの重臣たちは反対意見を述べた。彼らはイ・サンの摂政は無理だと主張した。
英祖は怒りを爆発させた。「皆、退場せよ!」と厳しく叱りつけたのだ。会議は休憩となり、しばらくして英祖は冷静さを取り戻し、再び言葉を発した。
「余は自らの病状をよく知っている。それなのに、重臣たちはなぜそれほど無情なのか」
こうしたやり取りを見ると、英祖の苦悩が伝わってくる。彼は自分の衰えを自覚しながら、思考はまともだった。
それから4カ月後、英祖は静かに息を引き取った。彼は最後まで認知症ではなかったと思われる。
本当に生命力にあふれた国王であった。そうでなければ、52年間も国王を務めることはできなかっただろう。
文＝大地 康
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