朝鮮王朝518年間に実在した世子たちを見ていくと、本当に玉石混交という印象が強い。才能にあふれた逸材がいれば、どうしようなく凡庸な人間もいた。そうした世子たちを総まとめしてみて「この人こそ史上最高の世子だった」と思えるのが、時代劇『雲が描いた月明り』でパク・ボゴムが演じたイ・ヨンこと孝明(ヒョミョン)世子である。
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彼がもし世子から国王に順調に成長していれば、聖君と尊敬された4代王・世宗(セジョン)を上回る統治能力を発揮したことだろう。
そんな孝明世子の人物像を改めて紹介しよう。
彼は23代王・純祖(スンジョ)の長男として1809年に生まれた。
子供の頃から頭脳明晰で理路整然とした思考能力を持っていた。しかも、容姿端麗で誰からも好感を持たれた。純祖は我が子の才能を大いに見込んで、18歳のときから摂政をまかせた。
このとき、孝明世子は官僚の人事を巧みに行ない、身分の違いにこだわらず有能な人を抜擢している。
もともと人事は統治の中でとても難しい分野なのだが、若き孝明世子は人心の掌握術にたけていた。さらに、彼は王宮の中の組織をうまくまとめあげ、改善すべき問題を迅速に処理していった。
そんな孝明世子は、聡明さでも祖父に似ていたと言われている。その祖父とは、まさに正祖(チョンジョ)であった。歴史に残る偉大な国王にたとえられるほど孝明世子は「名君の器」だった。
これほど期待されたのに、寿命だけはどうしようもなかった。彼は惜しくも1830年に21歳で亡くなってしまった。
結局、早世して国王になれなかった孝明世子は、歴史の表舞台で能力を生かす機会に恵まれなかった。こうして、「史上最高の世子」は歴史の中に埋もれてしまったのだが、『雲が描いた月明り』が彼を現代に甦らせてくれた。
パク・ボゴムが颯爽と凛々しく演じた孝明世子は、「韓国時代劇で描かれた世子の中で最高峰だった」と言っても決して過言ではないであろう。本当に絵になる主人公だった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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