ドラマ『ヘチ 王座への道』では、中盤以降になると、チョン・イルが演じるヨニングンが世弟(セジェ/国王の後継者となる弟)となり、王朝のナンバー2の座を確保する。それが可能になったのは、ハン・スンヒョンが演じる20代王・景宗(キョンジョン)が異母弟を信頼したからだった。そういう意味で、景宗は弟思いの兄であった。
しかし、「世弟に代理聴政(テリチョンジョン)をさせてほしい」という上訴が起きてから、景宗の心境にも変化が現れる。優秀な弟に王座を奪われるのではないか、という恐怖が景宗の心に忍び寄ってきたからだ。
この代理聴政というのは、朝鮮王朝時代の政治用語で、「摂政」を意味している。国王が未成年のときか国王が病気のときに後見人が代理で政治を仕切ることを指している。
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史実でも、1721年8月にヨニングンが世弟に選ばれたあと、彼を支持する老論派は景宗に対して「代理聴政」を働き掛けている。気が弱かった景宗は老論派の強硬な要請を拒むことができず、一度はヨニングンの代理聴政が決定的になった。
しかし、その直後に朝鮮王朝を揺るがす大事件が起こる。それは、景宗を支持する少論派が巻き返しに出て、「老論派の一部の高官が謀反を企てている」と上訴文を提出したことだった。
これだけでも大事件だったのに、さらに追い打ちをかけるように、少論派の地方官吏が「老論派によって謀反が計画された」という訴えを出した。
度重なる謀反の告発によって、老論派は壊滅的な打撃を受けた。最終的には、老論派の官僚が60人以上も死罪となり、同派は政権中枢から駆逐された。この時点で少論派の圧倒的な勝利である。
こうなると、老論派に支持されたヨニングンの立場が危うくなる。世弟を廃されて死罪になっても不思議でなかったが、最後は景宗がヨニングンをかばった。彼は弟を守り、決して見殺しにはしなかった。
こうして、ヨニングンは不問となり世弟の立場も安泰となった。景宗の兄弟愛がヨニングンを救ったのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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