パク・シフとコ・ソンヒが主役カップルとして激動の時代を生きる『風と雲と雨』は、19世紀後半の朝鮮王朝をドラマチックに描いている。
ストーリーも序盤から波乱万丈だ。
地方の高官だった父を持つ御曹司のチョンジュン(パク・シフ)は、成績抜群で将来を嘱望されていた。しかし、父が悪の権力者一族の陰謀によって濡れ衣を着せられて殺されてしまう。
さらに、相思相愛のボンリョン(コ・ソンヒ)が、王女であることが判明したのに悪徳一族によって軟禁され、チョンジュンは彼女と引き離されてしまった。
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奈落の底に落ちたチョンジュンであったが、亡き父の友人が救ってくれた。その際にチョンジュンが生きる術として学び始めたのが、易学であった。
やがてチョンジュンは朝鮮王朝で最高の易術家となり、次の国王の選定に関しても重要な役割を担っていく。こうして、易学は『風と雲と雨』で物語を動かすキーワードとなった。
ここで勘違いしてはいけないのは、易術家は観相師でないということだ。
観相師というのは、人間の顔の相を見て運命や能力を判定していく専門家だ。特に朝鮮王朝では観相師を重視していて、彼らは国王を選ぶときに「この人物は国王にふさわしい顔相を持っているかどうか」を判定していた。
このように観相師には独特の役割があったのだが、チョンジュンが受け持っていたのは顔相ではなく、あくまでも易学であった。
そして、朝鮮王朝で易学の中心を成すものは「四柱推命」なのだ。
この「四柱推命」というのは、人間の生まれた日時によって将来の運命を占うものだ。
ここで一番大事なのは、その人が生まれた年、日、時間である。それによって人間の将来は運命的に決まっている、と考えるのが「四柱推命」であり、朝鮮王朝では極限まで体系化されて易学の中心となった。
それは現代でも同様で、今でも韓国では「四柱推命」が易学そのものになっている。それゆえ、韓国では生まれた日だけでなく、時間がしっかり記録される。それが本人の出生証明となるのだ。
チョンジュンは「四柱推命」によって人間の運命を占う易術家となり、ことごとく人間の将来を当てる大家になっていく。
実際、『風と雲と雨』のハイライトになったのが、チョン・グァンリョルが演じた興宣君(フンソングン)の息子を、哲宗(チョルジョン)の次の国王にふさわしいと断定するところだった。
さらにチョンジュンは朝鮮王朝の行く末をピタリと言い当て、自分で使命感にかられて政治の世界に入っていったのである。
このように『風と雲と雨』は朝鮮王朝最高の易術家を主人公にしたことによって、歴史巨編としてハラハラするほどスケールが大きいドラマになった。まさに「題材の勝利」だと言える。
同時に、パク・シフが易術家を重厚に演じたからこそ、登場人物たちの運命を予言する場面が迫力満点になった。緊迫した場面が何度も出てきて、『風と雲と雨』は本当にスリリングな展開になっている。物語がどんどん面白くなっていったはずである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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