パク・シフは現代劇で颯爽とした主人公を演じている、という印象が強いが、時代劇でも本当に華がある主演男優だ。
イ・ジュンギが主演した『イルジメ[一枝梅]』でもパク・シフは凛々しい韓服姿で評判になっていたが、2011年に主演した『王女の男』では、華麗なる七変化を演じて、「時代劇が本当に似合う男」と称された。
このドラマでパク・シフは前半に水も滴るような御曹司を演じ、後半では復讐の鬼となって非道な国王に挑んでいく「信念の武士」に扮していた。間違いなく、『王女の男』はパク・シフの時代劇スターとしての本領を存分に見せてくれた作品だった。
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あれから9年……。パク・シフは現代劇での主役を続けてきたが、ついに歴史ドラマに帰ってきてくれた。それが時代劇巨編の『風と雲と雨』である。
韓国では2020年にTV 朝鮮で放送するや同局内で視聴率 1 位を獲得。日本では今年10月にDVDがリリースされ、レンタルはもちろん、U-NEXTでも独占先行配信されている、この秋話題の韓国時代劇ドラマだ。
このドラマは、19世紀の朝鮮王朝を舞台に、次期国王の争いをめぐる政変の中で時代に翻弄された男女を運命的に描いているのだが、その中でパク・シフが扮したのは、朝鮮王朝最高の易術師であったチェ・チョンジュンだ。
この主人公は本当に魅力的なキャラクター。地方の長官だった父親が陰謀によって殺されるが、卓越した頭脳で易学をマスターし、人の将来を占う特殊な才能を身に着ける……それがチェ・チョンジュンという男なのだが、その能力は国王ですら感嘆させるほどであった。
しかも、それだけではなく、人間性にも優れ、庶民の味方になって恵まれない人々を救済していく。明らかに「聖人」と呼べる存在だったが、パク・シフは端正な顔立ちと重厚感がある声質でカリスマ性があふれる主人公を魅惑的に演じきっていた。
それにしても、9年ぶりの時代劇は本当にパク・シフを輝かせていて、彼の韓服姿には気品と優雅さがあって、思わずウットリと見続けてしまうほどだった。その存在感は『王女の男』のときとまったく変わっていない。
さらに、『風と雲と雨』には『王女の男』のときになかったものがある。
それは円熟味ではないだろうか。
劇中でパク・シフは易学を究めて人の運命を当てていくのだが、まるで予言者のような自信に満ちた言動は、誰もが納得できる説得力があった。そういう意味でも、最高の易術師という役は今のパク・シフにピッタリであった。
そんな彼が共演したヒロインは、人の運命を瞬時に見極めるという特殊能力を持ったイ・ボンリョンに扮したコ・ソンヒである。
彼女は多彩な表現力を持った本格派の女優だが、パク・シフはコ・ソンヒと息を合わせて最高のラブロマンスを繰り広げてくれた。
また、パク・シフは王族の興宣君(フンソングン)に扮したチョン・グァンリョルと壮絶な演技対決に臨んでいた。
ドラマの中で興宣君は一筋縄ではいかない複雑なキャラクターなのだが、名優のチョン・グァンリョルは隙のない演技を見せてくれたし、呼吸を合わせたパク・シフの対応力も見事であった。
このように、主役のパク・シフは次期国王の決定に影響を及ぼすという重要な役を演じながら、引き出しの多い演技で『風と雲と雨』を最高に面白いドラマに導いていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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