NHKの総合テレビで毎週日曜日に放送されている『ヘチ 王座への道』は、終盤を迎えてきた。チョン・イルが演じる英祖(ヨンジョ)は、苦難の末に即位してからは、民衆のための政治を行なうために全力を注いでいく。
このように、ドラマでは英祖の巧みな統治ぶりが強調されていくのだが、実際に彼は史実でも即位直後から善政を行なっている。
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特に有名なのは、公平な人材登用だった。当時は各派閥の争いが非常に激しかったのだが、英祖は各派閥から公平に人材を抜擢することを心掛けた。この政策によって、官僚のやる気が大いに向上したという。やはり、英祖は人心掌握術がうまかったのだ。
もう一つ強調しておきたいことがある。それは、英祖が即位してすぐに始めた改革なのだが、それは刑罰を改めるというものだった。
特に、罪人の人権にも配慮した考え方が英祖の即位によって定着するようになった。
たとえば、英祖が即位したのは1724年だが、翌年には、特に過酷だった刑罰を廃止している。それは、罪人の膝に重い石を載せて骨を押しつぶすという刑罰だった。これは、あまりにむごい、と言われたが、すぐに改善された。
さらに、1729年には英祖の命令で画期的な法律が採用されている。それは、死刑囚に対して、初審、再審、三審という三回の審判を受けさせるものだった。それまでは一回だけの審判で刑罰が確定することが多かったのだが、英祖の改革によって、死刑執行の決定はより慎重になったのである。
また、英祖は後には、罪人の顔に罪名を入れ墨する刑罰を廃止したし、容疑者が国王に直接自分の無実を訴えることができるようにした。
こうした一連の改革は、当時としてはかなり画期的なものであった。
それを果敢に王命で実行できるのだから、やはり英祖は歴史に残る名君であったと言える。そんな彼の若き日をチョン・イルが『ヘチ 王座への道』で凛々しく演じきっていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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