朝鮮王朝には518年間で27人の王が君臨した。その中で、今に至るまで一番評判が悪い人は誰であろうか。
10代王の燕山君(ヨンサングン)は、確かに虐殺事件を起こして最悪の暴君であったが、性格が悪すぎて、軽蔑されるのが当然の王だった。いわば、「評判」にも値しない王であったのだ。
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この王を問題外と考えれば、倫理的な問題で悪評を今も受けているのは、間違いなく7代王の世祖(セジョ)である。
世祖は甥の端宗(タンジョン)から王位を強奪して1455年に7代王となった。しかも、何の罪もない端宗を僻地に隔離したあと、残虐にも殺している。
朝鮮王朝は儒教を国教にして倫理観を特に大切にしていたのに、世祖は最悪の倫理を犯してしまった王なのである。
しかも、世祖は極端な方法で政敵を除去して自分の政権を作った。そうした独断的な政治による弊害が本当に多かった。今の韓国でも世祖が罵倒されているのも、ごく当然のことなのである。
ところで、「世祖」は首陽(スヤン)大君の諡(おくりな)である。つまり、死んだ後に作られた尊号なのだ。
普通、諡は漢字2文字で作られた。最初の文字はその王の業績を、二つ目の文字は宗法(親族の基本になる家法)の地位を表していた。そして、“祖”は主に建国の業績を残した王に使わるので、後代の王は“宗”の漢字を使うのが普通だった。
世祖の場合も最初は、神宗(シンジョン)や聖宗(ソンジョン)を使う予定だった。
しかし、彼の息子が特に主張して“世祖”に決定したという記録が残っている。
これも、大変あつかましい話だ。王の名前までも尊大に作ってしまったのだ。これが前例になり、以後も宣祖(ソンジョ)や仁祖(インジョ)のように、“祖”がついた王の名が残ってしまった。
このように、倫理の問題や王の名前に関して、世祖の評判は今に至るまで本当に悪いのである。とにかく、世祖は絶対に王になってはいけない人だった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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