テレビ東京で平日の午前8時15分から放送されている『不滅の恋人』を見ていると、チュ・サンウクが演じるイ・ガンの場合、即位への執着が本当に凄まじい。弟のイ・フィ(ユン・シユンが演じている)をひどい罠にかけて王位をとことん狙っている。
歴史的にも本当にそうだったのか。
もともと、『不滅の恋人』のイ・ガンのモデルになっているのは王子の首陽大君(スヤンデグン)である。
彼は歴史的にも王位にこだわった。それは、『不滅の恋人』が描いている通りだった。
しかし、彼が執着したのは、官僚主導の政治に対する反感が根底にあったからだ。
史実を見てみよう。1452年に即位した端宗(タンジョン)は、11歳という年少だったこともあり、高官たちに政治を委ねるしかなかった。つまり、政権の比重が完全に高官側に移ってしまったのだ。
王族としてのプライドが人一倍強かった首陽大君にとって、これは我慢ならないことだった。
彼には、王を中心とした強力な王道政治を実現したいという野望があった。そのためには手段を選ばないというのが首陽大君の手法だった。
しかし、高官側にとっては一番危険な王族だ。
本来、高官側は「王族の中の1人が王になれば、それ以外の王族(たとえば王の兄弟や親戚)を重要な役職に就かせたくない」という意図を持っていた。
なぜなら、力を持った王族が多いと、必然的に王位継承争いが激しくなって政治が混乱するからだ。
過去にも、朝鮮王朝は初代・太祖(テジョ)の後継者をめぐって、息子たちが最初から骨肉の争いをしている。このようなことは二度とあってはいけないという戒めを込めて、高官たちは王族に対してかなりの警戒心を抱いていた。
そういう意味でも、首陽大君と高官たちは宿敵にならざるをえなかった。両者は利害が対立していたのだから……。
結局、1453年10月10日に首陽大君はクーデターを起こした。一方の高官たちは政権中枢にいただけに首陽大君の力をあなどって油断してしまって、首陽大君のクーデターを防ぐことができなかった。
そんな政変が『不滅の恋人』のモチーフになっている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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