Disney+で配信中の時代劇ドラマ『濁流』は、京江(キョンガン)という巨大な流通の拠点を舞台に展開される群像劇である。
ここでは、富と権力が結びつき、貧しい者や声を持たぬ者が無情に押し潰されるという非情な社会の構造が描かれる。しかし、その荒波の中でも若者たちは不当な力に屈せず、自らの手で未来を切り開こうとする。
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彼らの姿勢は、濁った大河に逆らって泳ぐ魚のように勇敢であり、時代に翻弄されながらも信念を貫こうとする人間の強靭な意志を象徴している。
こうした生き様は、現代に生きる私たちにとっても大きな共感と感動を呼び覚ますものであり、本作の最大の魅力となっている。その中でパク・ジファンが演じるムドクは、まさに人間の欲望と狡猾さを体現した人物である。
虎のように強欲で、狐のように抜け目なく、蛇のように巧妙な言葉を操るムドクは、物語の濁流にさらなる渦を生み出す存在である。
パク・ジファンの表情ひとつ、声の抑揚ひとつが、この人物に妖しげな生命を吹き込んでいる。
パク・ジファンは、2006年の映画『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』でデビュー。ヤクザ役で頭角を現し、マ・ドンソク主演の大ヒット映画『犯罪都市』シリーズで一躍注目を集めた俳優である。
強面でありながらも人間臭さを漂わせる演技は、観客に鮮烈な印象を与え、彼の代表的イメージを決定づけたといえるだろう。
ドラマでは『真心が届く』で法律事務所オルウェイズの事務長イ・ドゥソプを演じ、『私たちのブルース』ではクッパ屋店主チョン・イングォンを務めた。さらに、『京城クリーチャー』シリーズでは、金鈺堂の所長ク・ガッピョンを演じた。。
このほか、時代劇『于氏王后』では王直属の部隊長ムゴルを演じ、力強さと忠誠心を兼ね備えた武人像を描いた。
こうして振り返れば、パク・ジファンは実に幅広い役柄を自在に演じ分けてきたことがわかる。いずれの役においても彼が貫いているのは、人間の内面に潜む複雑さをリアルに引き出す演技力である。
『濁流』で演じるムドクもまた、その延長線上にある。表面的には欲深く狡猾な人物でありながら、その奥底には何かしらの痛みや渇望が潜んでいることをパク・ジファンは巧みに表現する。
観客はムドクを嫌悪しながらも、どこか憎みきれず、むしろ人間らしさに心を引き寄せられてしまう。
パク・ジファンは、そんな矛盾を抱えた人物を演じることにおいて卓越した俳優であり、彼の存在が『濁流』の物語をさらに深みあるものへと押し上げている。
総じて、パク・ジファンが『濁流』という重厚なドラマの中で見せる演技は、作品世界の濁った流れを一層生々しく、そして力強く観客の胸に刻み込むだろう。
♢パク・ジファン プロフィール
生年月日:1980年9月5日うまれ
身長:182cm
星座:おとめ座
学歴:慶熙大学衣類デザイン学科
デビュー:2006年の映画『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』
☆主な出演作
『犯罪都市』(2017年、映画)
『真心が届く~僕とスターのオフィス・ラブ~』(2019年、ドラマ)
『緑豆の花』(2019年、ドラマ)
『模範刑事』(2020年、ドラマ)
『犯罪都市 THE ROUNDUP』(2022年、映画)
『私たちのブルース』(2022年、ドラマ)
『純情ボクサー』(2023年、ドラマ)
『犯罪都市 NO WAY OUT』(2023年、映画)
『京城クリーチャー』(2023年~2024年、ドラマ)
『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』(2024年、ドラマ)
『犯罪都市 PUNISHMENT』(2024年、ドラマ)
『于氏王后』(2024年、ドラマ)
『京城クリーチャー シーズン2』(2024年、ドラマ)
『濁流』(2025年、ドラマ)
文=大地 康
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