Disney+で配信中の時代劇『濁流』の第2話と第3話は、ただの群像劇にとどまらず、それぞれの登場人物の過去や信念が交錯し、京江(キョンガン)という街の激流に抗う姿を鮮烈に描き出した。
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観ている側としても心をえぐられるような瞬間が多く、物語への没入感が一段と高まった回であった。
第2話は、チャン・チャン・シユル(演者ロチェ・ウン)が無法者集団ワルペを打ち倒した余波から始まる。飢えと不正に翻弄される労働者たちの姿は痛ましく、チャン・シユル自身もまた生き延びるために必死であった。
商団の娘チェ・チェ・ウン(演者シン・イェチェ・ウン)は、男社会の中で女性ゆえに軽んじられながらも、毅然と声を上げる姿が印象的だ。彼女が「不当な税は払わない」と言い切る場面は、思わず胸が熱くなる瞬間であった。
一方、新たに登場した従事官チョン・チョン(演者パク・ソハム)は、清廉さを武器に腐敗した捕盗庁へと足を踏み入れる。
彼の真っ直ぐな眼差しと若さは、重苦しい京江の空気を切り裂くように鮮烈であった。そして、物語は予想外の再会で大きく揺れる。
チョン・チョンが目にしたのは、死んだと思っていたチャン・シユル。再会の抱擁は涙なしには見られない名場面であり、2人に秘められた過去が物語の核心へ迫ることを予感させた。
続く第3話は回想から始まり、チャン・シユルの過去がついに明かされる。幼い頃に女真族の襲撃で家族を失い、絶望の淵でチョン・チョンとその母に救われた記憶が描かれる。
そこに映し出された少年時代の無邪気さは、現在の寡黙な彼からは想像できず、その落差に胸が締めつけられる思いだった。
一方で、ムドク(演者パク・ジファン)率いるワルペに取り込まれる形となったチャン・シユル。力では敵なしの彼が、弱みを握られて無理やり従わされる姿は屈辱的でありながら、人間味のある一面も垣間見える。
ワルペの仲間たちがコミカルに描かれ、単なる悪役ではない彼らの人間性がにじみ出るのもこの回の魅力であった。また、チェ・ウンとチャン・シユルの対立も本格化する。
労働者を守ろうとするチェ・ウンの強さと、己の生き方を問われ沈黙するチャン・シユル。その対比は鮮やかで、2人の関係が今後どう変化していくのか大きな見どころとなった。
第2話と第3話を通じて強く感じたのは、『濁流』というタイトルそのものの意味である。
権力や欲望に飲み込まれそうになりながらも、自分の信念を手放さずに立ち向かう者たちの姿が、まるで荒れ狂う川の中で必死に泳ぐ若者のように映し出されていた。
チャン・シユルとチョン・チョンの絆、チェ・ウンの覚悟、そしてムドクの矛盾に満ちた人間性。それぞれが絡み合い、物語はますます深みを増している。
文=大地 康
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