テレビ東京の韓流プレミアで9月15日に放送された『トンイ』第31話は、まるで宮廷の空気そのものが揺れ動くかのような緊迫と愛情の交錯が描かれた回である。
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冒頭、粛宗(スクチョン/演者チ・ジニ)は、トンイ(演者ハン・ヒョジュ)を守り抜くために彼女を“承恩尚宮(スンウンサングン)”へと任命する。この決断は単なる寵愛の証ではなく、王が誰にも干渉させぬ強固な意志を示す荘厳な宣言であった。
だが、重臣オ・テソクを筆頭に朝廷の官僚たちは声を荒げる。「トンイは放火の罪人であり、宮廷を脱した身である」と非難し、王に迫る。しかし粛宗は冷ややかな眼差しで「そなたたちが口を挟むことではない」と言い放ち、王権の威厳を誇示する。場を圧するその一言に、玉座の威光がひときわ輝きを放った瞬間であった。
一方、王妃の座に就いている張禧嬪(チャン・ヒビン/演者イ・ソヨン)は、地位が揺るがぬ限り何も奪われることはないと自らを慰める。だが心の奥底では、不安と嫉妬がじわじわと忍び寄る。彼女は弟チャン・ヒジェ(演者キム・ユソク)の釈放を条件に、トンイを承恩尚宮として認めるよう王に取引を持ちかける。
しかし粛宗は毅然と拒み、「トンイを守るのはあくまで自分の意志である」と宣告する。その言葉には燃えるような情熱と揺るぎない決意が宿っていた。
やがて、何も知らぬまま宮中へ戻ったトンイは、王が用意した華やかな礼服をまとい、多くの視線と敬意を受ける。戸惑いに震える彼女は粛宗に「誤解ではないか」と訴えるが、王は静かに指輪を差し出し「私の想いを受け入れるか考えてほしい」と語りかける。その瞳には、深い慈愛と永遠を誓うような覚悟が煌めいていた。
しかし、トンイの胸中には苦しい葛藤が渦巻いていた。粛宗への慕情が芽生えながらも、自らが“剣契(コムゲ)”の首領の娘という宿命を背負い、追われる身であることを隠している罪悪感に苛まれていたのである。彼女は心を鎮めるため、父と兄の命日に宮廷を抜け出し、命を落とした絶壁へと足を運ぶ。
その頃、幼なじみにして護衛のチョンスは、粛宗に正面から問いかける。「トンイをどう想うのか」と。王の真摯な答えを聞いたチョンスは、トンイの居場所を知らせる決意を固める。彼女の幸せを願い、王の誠意を信じたからである。
物語の終盤、墓前に立つトンイは涙とともに過去と向き合い、ついに心に秘めた想いを解き放つ。彼女は粛宗への愛を拒まず、王のそばに生きる覚悟を選び取る。その決断は、彼女自身の運命をも変える大きな一歩であった。
第31話は、罪人の娘としての過去に苦しむトンイの心の揺らぎと、粛宗の揺るがぬ愛が重なり合う劇的な章であった。同時に、王権と重臣たちの対立、そして張禧嬪の策略が渦を巻き、宮廷内の緊張はますます高まる。愛と権力、忠誠と野心がせめぎ合う中、物語はさらに壮大な局面へと進み出していくのである。
文=大地 康
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