コ・ドゥシムが『ホジュン~伝説の心医~』見せた魂の名演技に心が震える

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韓国ドラマ『ホジュン~伝説の心医~』において、主人公ホ・ジュンの母・ソン氏を演じたコ・ドゥシムの演技は、彼女の女優人生の集大成とも呼べるほどの深い感動を与えるものであった。

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貧しさ、差別、社会的困難といった時代の荒波の中でも、決して折れることなく息子の未来を信じ続ける母の姿。そこには、母を演じたのではなく、母そのものになった女優の真骨頂があった。

劇中、ソン氏は賤民として生まれたホ・ジュンが名医として世に名を残すまでの長い道のりを、常に影から支え続ける。夫を亡くし、日々の食事にも困るような暮らしの中でも、彼女が目を向けるのはただ1つ、息子の成長と将来である。

息子を信じ、愛し、そしてその背中を静かに押し続ける姿は、単なる慈母像にとどまらない。むしろ、自らの運命と社会の理不尽に毅然と立ち向かう、凛とした1人の女性の生き様そのものである。中でも視聴者の心を強く打つのが、幼いホ・ジュンが周囲から差別され、涙を流した後の場面だ。

ソン氏は息子を優しく抱きしめながら、静かに言葉を紡ぐ。「おまえはきっと立派な人になるから」という台詞に込められた“祈り”ともいえる想いを、コ・ドゥシムは魂をこめて演じた。

コ・ドゥシム
コ・ドゥシム

母親役で深い感動を与える女優

言葉少なに、しかし揺るぎない眼差しで息子を励ますその表情には、長年“母”という役を演じ続けてきた女優としての重みと、人生から滲み出る人間理解の深さがある。

こうした演技が視聴者の心を動かすのは、単なる技術的な巧みさに由来するものではない。むしろそれは、長きにわたり“韓国の母”を体現してきたコ・ドゥシムだからこそ生み出せた感情の重層性とでも言うべきものである。

さらに彼女は、時代劇にありがちな形式的で硬直した演技にとらわれることなく、時代を生きる1人の“母”としてのリアルな息遣いを演じ切った。

貧困や差別といった現実をすべて受け入れつつ、なお息子に笑顔を向ける母。そんなソン氏の姿には、視聴者の感情を根底から揺さぶるだけの力がある。

とりわけ印象深いのは、ホ・ジュンが旅立つ日。何も語らず、ただ涙を流して見送るそのシーンは、台詞よりも雄弁にすべてを語る名場面である。あの沈黙の中に凝縮された想い、母の誇り、別れの哀しみ、未来への祈り、それらすべてが、見る者の心を深く揺さぶる。

『ホジュン~伝説の心医~』は、医聖と称されるホ・ジュンの成功物語であると同時に、彼を陰で支え続けた人々、特に母・ソン氏の物語でもある。そしてその母を体現したコ・ドゥシムは、作品を超えて“母”という存在”の深さと重さを私たちに思い起こさせてくれた。

彼女の演技には、過度な演出や感情の爆発はない。しかし、静けさの中に湛えられた情熱と覚悟は、何よりも雄弁に“母の力”を物語る。

韓国社会において母という存在がどれほどの重責を背負い、いかに力強く生きてきたのか。それを可視化した彼女の演技は、まさに韓国映像文化に刻まれるべき偉大な足跡のひとつである。

『ホジュン~伝説の心医~』の中で、コ・ドゥシムは母を演じたのではない、母そのものになったのである。

文=大地 康

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