子役時代から長いキャリアを誇るキム・ユジョン。彼女にとって本当に重要な時期となったのが、『太陽を抱く月』(2012年)で主人公ヨヌの少女時代を演じたときだった。
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このドラマの序盤の名シーンが忘れられないという。それは、ヨヌが父親の胸に抱かれて死を迎えるところだ。あのとき、キム・ユジョンはどのような心構えで撮影に臨んだのだろうか。
「とても難しいシーンでしたので、最初は感情を出しすぎないようにしようと思っていました。そこで、撮影のときはただセリフだけ覚えて行きました。でも、いざ撮影現場で演技をしようとしたら、とても悲しくなったのです」
予期しないことが起こった。キム・ユジョンは台本を読んでいたときも確かに悲しかったのだが、撮影現場では想像以上に感情が強烈になってしまったのである。
「あまりに集中したせいで、つらくなったのだと思います。なんとか気持ちを整理しようと努めました。あのときの気持ちを振り返ると、本当にヨヌになりきっていたと思います。演技するときに集中するということは、そのキャラクターになりきるということなのですね」
ここまでわかっているのだから、キム・ユジョンの勘の良さには驚かされる。彼女は、撮影現場で多くの人たちの動きを観察していたという。
「俳優の先輩たちの演技を見ながら、いつも自分の演技をチェックしていました。それが俳優の本能ですし、俳優に必要な部分だと思います。実は、私は声が幼いときからハスキーなほうなので、キャスティングされなかったこともありました。タイトルは言えませんが、すごくヒットした映画です」
しかし、キム・ユジョンは「ハスキーなことが短所」とは思わなかった。
「むしろ、もっと声に鋭敏になって、声を変える技術を得ることもできました。先輩の女優の中には、女性として低い声であってもそれを自分の長所にしている方もいらっしゃいます。私はこれを短所ではなく、魅力の1つにできればいいと思います」
子役の時代からここまで考えられるのがキム・ユジョンの卓越したところだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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