チョン・イルは、現代劇だけでなく時代劇でも良さを大いに発揮する俳優だが、彼が主演した『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、朝鮮王朝を舞台にしたスケールが大きい時代劇に仕上がっている。
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何よりも、物語の設定がとても面白い。そのことは、ストーリーの概略を説明すればよくわかるだろう。
主人公のバウ(チョン・イル)は、「ポッサム」という「寡婦を誘拐する仕事」をしている。それはどんな仕事なのだろうか。
朝鮮王朝時代は男尊女卑の傾向が強く、女性は再婚が原則的にできなかった。しかし、愛しあう男女を救う道があった。それがバウの仕事であり、寡婦を布で包んで(包むことをポッサムと言う)誘拐して再婚を実現させるのであった。
ところが、バウは人違いでファイン王女(クォン・ユリ/少女時代)を誘拐してしまった。彼女は重臣の息子と結婚していたのだが、夫を早く失くしていた。
この人違いが大騒動となった。光海君(クァンヘグン)が娘のファイン王女に会いたがっていて、苦境に陥った重臣がファイン王女の葬式を行ってしまったのだ。
こうなると、バウも知らん顔をできない。彼はファイン王女を必死に守ろうとするが、重臣が送って来た刺客に次々と襲われて、バウとファイン王女がピンチの連続になってしまう。本当にハラハラさせられる展開だった。
最初はケンカばかりしていたバウとファイン王女。やがて和解したあとは、徐々にラブロマンスに発展していく。こういう流れの中で、ファイン王女を演じるクォン・ユリの演技力には魅せられる。高貴な身分を美しくに演じていて、凛とした意志を見せる表情がとてもいい。時代劇のヒロインとして素敵な存在感を持っている。
なお、バウとファイン王女の2人にからんでくるのが、重臣の息子のデヨプ(シン・ヒョンス)である。彼は兄嫁のファイン王女を心から愛しているだけに、献身的に彼女を守ろうと尽力する。
以上の3人が中心になって、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は歴史と運命を描いた壮大な物語になっていく。後半は史実どおりに権力闘争が激しくなるが、そのあたりも重厚に描いていて見応えがあった。
〔『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』ドラマ概要〕
制作/MBN 、2021年
配信/U-NEXT
演出/クォン・ソクチャン
脚本/キム・ジス、パク・チョル
出演者(演じた役名)/チョン・イル(バウ)、クォン・ユリ(ファイン翁主)、シン・ヒョンス(イ・デヨプ)、キム・テウ(光海君)、イ・ジェヨン(イ・イチョム)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
作家。1954年東京・向島で生まれる。韓国の歴史・文化・韓流や日韓関係を描いた著作が多い。『知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物』を含めた朝鮮王朝三部作は70万部を超えるベストセラーとなった。最新刊は『朝鮮王朝「背徳の王宮」』。
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