大ヒットした『涙の女王』には、印象的な2人の母親がいた。1人はホン・ヘイン(キム・ジウォン)の母親のキム・ソンファ(ナ・ヨンヒ)だ。極端な意地悪キャラであり、ヘインとも犬猿の仲だった。もう1人はペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)の母親のチョン・ボンエ(ファン・ヨンヒ)で、息子を溺愛する優しいママであった。
【関連】18歳年下の日本人女性に“一目惚れ”。韓国俳優の結婚相手が「超美人」と話題
2人は対照的な立場だった。ヒョヌとヘインが結婚したとき、ボンエは「お互いに仲良くしましょう」とソンファに呼びかけたのだが、ソンファはあまりにも冷酷だった。
財閥家の彼女は田舎者のボンエを徹底的に卑下し、ひどい言葉で彼女を馬鹿にした。普通ならボンエが激怒するところなのだが、彼女は必死にこらえた。それもすべて息子のためであった。
さらに、ボンエがヒョヌの立場を考えてソンファに頭を下げに行ったときも、彼女は再びボンエを徹底的に蔑(さげす)んだ。このときもボンエは息子のために我慢した。こういう場面ではまさに「鬼ママVS溺愛ママ」という図式になっていた。
しかし、第8話の終わりから2人の立場が一変する。それは、財閥家が没落してヒョヌの実家の居候になったからだ。それまで散々ボンエを馬鹿にしていたソンファも、今度ばかりは高飛車になれない。しかし、プライドの高い彼女はそう簡単に頭を下げない。やはり意地悪キャラは変わっていなかったのだ。
そんなソンファがついに変わってきた。それはヘインが余命の短いことを知らされたからだ。さすがに鬼ママも平静ではいられなかった。彼女がヘインに極端に冷たいのは、愛する息子が海で溺れ、その原因がヘインにあると勘違いしていたからだ。つまり、息子を溺愛した反動で娘を無視したというわけだ。
そのことにようやくソンファが気づいた。途端に彼女の価値観は総崩れとなった。「娘に対する態度」と「ボンエに対する冷酷さ」の二つがあまりにもひどかったことを大いに反省したソンファ。ドラマの前半では極端な意地悪キャラであったが、終盤に向けてようやく人間らしい性格に戻ったのだ。
傲慢な人間はやはり落ちるところまで落ちないといけない。そうしないと人間の道理はわからないのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】【あんな姉がいたら弟はどうする?】『涙の女王』が描く家族関係で一番痛快な2人とは?
前へ
次へ