イ・ソジンは、本当に器用な俳優だ。どんな役を演じても、抜群の適応力を見せてキャラクターの存在感を際立たせている。そんな彼の真骨頂が存分に発揮されたのが、ドラマ『イ・サン』で主人公のイ・サンに扮したときだった。
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ドラマの中でイ・サンは国王でありながら剣の達人だったが、演じたイ・ソジンの殺陣も本当に素晴らしかった。なにしろ、屈強な武士たちがイ・サンを襲ってきても、彼は俊敏な立ち回りで敵を完璧に倒していた。
撮影がスタートする以前からイ・ソジンがどれほど激しく殺陣の練習に没頭したのか、と思われたが、実際にそうではなかった。驚くべきことに、イ・ソジンは撮影前にイ・ビョンフン監督から「アクションシーンは多くないから、練習の必要はないよ」という意外な言葉を受けていたのだ。
主演俳優が監督からそう言われれば、当然ながら殺陣の練習はしない。ところが、現実は違った。いざ撮影が開始されると、なんと、予想に反して彼の前には多数のアクションシーンが待ち受けていたのだ。
「聞いていた話と違う」
そう思ったが、イ・ソジンも覚悟を決めざるをえない。必死になって殺陣のシーンに取り組み、周囲が驚くほど情熱的に演じきった。
あわてたのがイ・ビョンフン監督だ。「もしも主演俳優が怪我をしたら大変なことになる」と心配し、スタントマンと代わることを提案してきた。イ・ソジンはこの提案を断り、自らアクションシーンに挑むことを選んだ。
実は、イ・ソジンにはスポーツとロッククライミングという活動的な趣味があり、彼は本能的に身体を動かすことが好きだった。そのため、激しいアクションシーンも彼にとっては難しいことではなく、乗馬シーンにおいても、スタントマンなしで見事に演じ切った。
こうして、イ・ソジンの隠された才能が、予期せぬ挑戦に直面した際に大いに発揮された。ドラマ『イ・サン』で自己の限界を超える勇気と情熱を見せたイ・ソジンの姿は、本当に頼もしかった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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