2003年の『天国の階段』で悪女を演じて強烈な印象を残したキム・テヒ。順調に主演女優として活躍したあとで意外なキャラクターに挑戦したのが、2013年の時代劇『チャン・オクチョン』であった。演じたのは、朝鮮王朝の悪女の代名詞と言われた張禧嬪(チャン・ヒビン)である。ドラマのタイトルには、彼女の本名の張玉貞(チャン・オクチョン)がそのまま使われていた。
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もちろん、人気絶頂だった人気女優が演じるのだから、主人公のオクチョンは従来どおりの悪女ではなかった。実に才能がある女性として描かれていたのだ。
ドラマの序盤の展開を見てみよう。オクチョンは、衣装の仕立てを生業としていた。彼女は、まさに朝鮮王朝時代のデザイナーであり、その才能は非凡で顧客も絶え間なく訪れていた。しかし、彼女の母が賎民(チョンミン)であるという事実が露見すると、急速に彼女への仕事の依頼が途絶えてしまった。
一方、ユ・アインが演じるイ・スン(19代王・肅宗〔スクチョン〕のこと)は、王朝の高貴な世子としての立場にあって、韓服の寸法を測るために訪れた際、偶然にもオクチョンと運命の出会いを果たす。この出会いは、後に2人の間の燃え上がるような愛の伏線となる。
その後、イ・スンは父の死去に伴い王位を継承して重責を担うことになった。当時は激しい派閥争いが渦巻く中、オクチョンは若き王の心を惹きつける重要な役割を果たした。やがて運命の歯車が回り、オクチョンは王宮で女官として働くようになり、2人は深い愛に落ちる。
従来のドラマを見れば、張禧嬪は欲望が強すぎる女性として描かれてきたが、『チャン・オクチョン』では、ファッションセンスに長けたキャリアウーマンとしての新たな一面を見せていた。特に、一途な愛に生きる情熱的な女性として存在感を強烈に発揮していたのだ。
さらにこのドラマでは、時代の流れに翻弄されながらも運命的な愛と情熱に生きる女性の生き様を、華やかながらも切ない筆致で描き出していた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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