傑作は簡単には生まれない。脚本・演出・俳優のすべてが高度に融合して人々を感動させる珠玉の作品が世に誕生するのだ。実際、『赤い袖先』は今までの時代劇の中でも特別な完成度を持っていた。史実を巧みに取り入れた物語は、時にスリリングに躍動的で時に情緒的に余韻が残った。さらに、細部まで洗練された映像美が素晴らしかった。
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最初にこのドラマにあった難題とは、イ・サンと最愛の宮女との尊い愛の描写であった。すでに、名作『イ・サン』で2人の情愛は詳述されていたからだ。
主役となったイ・ソジンの見事な演技により、イ・サンは名君としての深い考察と堂々たる威厳で視聴者の心を捉えた。だからこそ、イ・サンと宮女の物語を再び描く際には、従来のような描き方では視聴者の納得を得られない恐れがあった。
その不安を払拭したのが、チョン・ジイン監督であった。彼女は才能に溢れた演出家だ。脚本家チョン・ヘリと共に『赤い袖先』の核心をドラマに絶妙に取り入れた。それは、宮女の視点から見た名君の葛藤と進化を巧みに織り込んだことだ。
特筆すべきはイ・ジュノとイ・セヨンのキャスティング。それが本当に見事であった。『赤い袖先』において、イ・ジュノは深い歴史の理解と表現力を駆使して名君を演じ、一方のイ・セヨンはその豊かな経験を活かして宮女ソン・ドギムを感情豊かに表現した。
このように、ドラマの成功の背後には2人の俳優の卓越性があった。また、前半で英祖(ヨンジョ)を演じた熟練の俳優イ・ドクファは、その迫真の演技でドラマをいっそう引き締めた。
こうして『赤い袖先』の大成功によって、歴史を基にした宮廷劇の魅力が再評価された。最近は架空の時代設定を使った時代劇が増加していたが、『赤い袖先』は正統的な宮廷劇が再び注目される契機を作った。間違いなく、新たな時代劇の未来を明るく照らしてくれた傑作であり、今後も人々の心にずっと残る記念碑的な作品になっていくことだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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