テレビ東京の韓流プレミアで放送されている『イ・サン』において、強烈な存在感を放っているのがキム・ヨジンの演じる貞純(チョンスン)王后である。
【ドラマ解説】貞純大妃の復活!『イ・サン』が描く王朝の陰謀と権力闘争の舞台裏
貞純王后は英祖(ヨンジョ)の二番目の正室だ。イ・サンは英祖の孫であり、英祖が亡くなった後に22代王として即位した。この時の王室の序列から言えば、イ・サンの祖母にあたる貞純王后は王族の最長老として絶大な権威を持つ存在であった。イ・サンの実母である恵慶宮(ヘギョングン)よりもさらに上の立場であったのだ。
しかし、貞純王后は老論派と結託してイ・サンの即位を邪魔したという過去があった。そのことを問われてイ・サンが国王になった時に立場が本当に危うくなった。もしもイ・サンが貞純王后を厳しく処罰すれば、貞純王后は王族の資格を失いかねなかった。
結局、イ・サンは貞純王后を謹慎に留めた。血は繋がっていないとはいえ、形式的に貞純王后は国王の祖母にあたるわけで、儒教的な長幼の序をイ・サンは守り抜いた。こうして王族の立場を守った貞純王后であるが、謹慎という立場なので、王族の最長老とは言っても表だった活動は控えていた。
しかし、それだけで済ませる女性ではない。彼女は、イ・サンの一番の側近であった洪国栄(ホン・グギョン)に近づいた。彼の政敵の弱みを洪国栄に知らせるという形を通して、貞純王后は洪国栄を懐柔しようとしたのだ。そのことは洪国栄も十分に理解していた。彼は、自分の権力をさらに拡大するためには貞純王后の協力が不可欠であると悟った。
結果的に洪国栄は妹をイ・サンの側室に送り込むという策略も実行した。妹が亡くなったことで成果を挙げられなかったが、その亡き妹の養子にイ・サンの異母弟の息子を迎えるという新たな戦略もやり抜いている。そんな洪国栄を味方に引き入れたという意味で、貞純王后は大変な政略家であった。
彼女はこれからどのような活動を行なっていくのか。それはイ・サンにどのような影響を与えるのか。今後も貞純王后の動向から目が離せない。
文=大地 康
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