朝鮮王朝22代王のイ・サンが即位してから極端に立場が悪くなったのが貞純(チョンスン)王后であった。彼女は英祖(ヨンジョ) の二番目の妻である。そして、イ・サンにとっては祖母にあたる。イ・サンより7歳だけ上なのだが、形の上では立派な祖母なのである。必然的に、孫は祖母に従わなければならない。
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とはいえ、貞純王后はイ・サンにとってあまりに強烈な政敵でありすぎた。彼女はイ・サンの父親である思悼世子(サドセジャ)が米びつに閉じ込められて餓死したときに、英祖に対して思悼世子の素行の悪さを意図的に伝えたという過去があった。それだけではなく、イ・サンが英祖の後継者として次の国王を担う立場であったのに、イ・サンの即位を邪魔する動きを頻繁に行っていた。
そうした妨害を乗り越えてイ・サンは1776年に即位した。このとき、実はイ・サンとしても貞純王后を絶対に処罰しなければならない立場となっていた。しかしながら、祖母であるという事実が重くのしかかってきた。
なにしろ朝鮮王朝は儒教を国教としている。儒教の最高の特目は「孝」であり、目上の人に対する「長幼の序」は必須なのだ。そうであるなら、孫が祖母を処罰するというのはあってはならないことだ。それゆえイ・サンは貞純王后の処遇に苦労したのである。
ドラマ『イ・サン』ではキム・ヨジンが演じる貞純王后が自害するという場面も描かれていた。命を取り留めたのだが、この事実はイ・サンに衝撃を与え、ついに彼は貞純王后を処罰しなかった。
これは歴史的にもよく知られている事実であり、貞純王后はイ・サンに対して様々な妨害活動をしていた割には祖母という立場に守られて処罰を免れていた。イ・サンにとっては、まさに苦渋の選択であっただろう。
そんな貞純王后をキム・ヨジンが冷たい表情で思惑たっぷりに演じていた。本当に貫禄がある演技であり、ドラマ『イ・サン』においてキム・ヨジンはとても厳しいほどの存在感を持っていた。
文=大地 康
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