『シスターズ』に『アンナ』も。“貧乏”を語る韓国ドラマが注目される理由は?

昨今、貧富の両極化問題を描いた韓流コンテンツが目立って増えている。例えば、映画『パラサイト 半地下の家族』、Netflixで配信中のドラマ『イカゲーム』や『シスターズ』、Prime Videoで配信中の『アンナ』、Disney+で配信中の『ゴールデンスプーン』といった作品がそれだ。

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韓国ではこれらのコンテンツが描く、貧乏な生活の露骨な描写が大いに話題を呼んだ。

映画『パラサイト』では主人公から漂う“古い切り干し大根”あるいは“地下鉄の乗客特有”の臭い、いわゆる「半地下の臭い」が観客に強い印象を残した。また、「私は生活に余裕があるかどうかを見る時、髪と靴を見るんです」というドラマ『アンナ』の主人公のセリフはSNSで議論を巻き起こした。

(画像=Coupang Play『アンナ』韓国版ポスター)

2022年10月現在、Netflix「今日のTV番組TOP10」の上位をキープしている『シスターズ』では、「お金があれば買いたかった物は?」と聞かれた主人公が「冬のコート。貧しさは冬の服に表れます。夏は何とかごまかせても、冬服は高価ですから」と言う。他にも「家が貧しいの? あまりにも辛抱強いから」「人は貧しいと死ぬ」などの痛烈なセリフが、多くの視聴者の胸を詰まらせた。

これらを見た人は、自ずと体臭や髪、靴、冬服などを確認してしまったのではないだろうか。

実際にここ2、3年、韓国ではニッチフレグランスの需要が急増した。デパート・チェーンの最大手、ロッテ百貨店は2021年の香水の売上が前年比40%増加、史上初の1000億ウォンを突破している。コロナ禍の長期化によるストレスを減らし、個性を表現する手段として香水が脚光を浴びるようになったと言われているが、映画『パラサイト』が露骨に描いた「臭いの差別」のメッセージも少なからず影響しているはずだ。

根底には若者世代に広がる「不安感」

資本主義の矛盾と社会格差を暴露し、深刻な貧困問題を赤裸々に描くようになった韓国の映像コンテンツ。その動きの根底には、若者世代に広がる貧困や未来に対する不安感があるのだろう。

話題作『シスターズ』の脚本を手がけたチョン・ソギョン氏も、メディアのインタビューでこう語っている。

「最近は、若い人ほどお金の話をたくさんする。まるで挨拶のように、株価やビットコインはどうなったかを話す。今や財テクが自己啓発の一部になった感じだ。今の若者たちはお金に触れる機会が少なかったので、貧困や未来に対する不安と欠乏が大きいと思う」

そのため「貧しい人が突然大金を手にすれば、何を考え、どんな行動をするか。お金が彼らにどんな可能性を与えるか知りたかった」のだとチョン氏は話す。そしてお金の意味について考えさせるという意図のもと、主人公の壮絶な生き様を視聴者にこれでもかと見せつけた。

(画像=tvN『シスターズ』韓国版ポスター)

一方で、メディアが貧困の現実を勝手に規定することは「暴力」という批判もある。たまたま髪の毛がボサボサで、冬のコートの質が悪いという理由で、知らぬうちに他人から「貧しい人」と評価される可能性も否めないのだ。

それゆえにコンテンツの制作側にも慎重さが求められている状況だが、確実に言えるのは、もはや庶民的なヒロインが財閥の御曹司と恋をするシンデレラストーリーは、韓国ではウケないということだろう。

「幸せいっぱいな物語は、私たちを変えられない」というチョン氏の発言からも、韓流コンテンツの今後の傾向が予測できる。もしかしたら、そこにも新たなビジネスチャンスが潜んでいるかもしれないだけに、引き続き動向を注視していきたい。

文=李 ハナ

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