韓国ドラマ界はいま、“法廷ものブーム”。弁護士を主人公にしたヒット作が多い理由は?

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2021年Netflixでヒットした『ヴィンチェンツォ』と『ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-』、今もTOP10にランクインされている『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。さらにはDisney+で絶賛配信中の『ドクター弁護士』と『ビッグマウス』まで。

ここ1~2年の間に配信された韓国ドラマをいくつか挙げてみたが、これらの共通点にお気づきだろうか?

そう、いずれも主人公の職業が「弁護士」なのである。

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前出のドラマ以外にも、弁護士を主人公にした作品はまだある。韓国で2022年7月に放送終了した『なぜオ・スジェなのか』(SBS、原題)や現在放送中の『ルール通りに愛して!』(KBS2)、Disney+で配信中の『弁論をはじめます。』『わずか1000ウォンの弁護士』など。弁護士を主人公とした“法廷もの”が急増している。

近年、動画配信サービスや無料WEBドラマの普及によって、韓国ドラマの制作本数が増えている。もちろんジャンルも多様化され、ラブストーリーがメインの作品がかえって珍しくなった。

むしろロマンス要素が一切含まれない作品に熱狂する傾向もある。その代表例が『ミセン-未生-』や『秘密の森』『ストーブリーグ』だ。

これらの作品は韓国社会の矛盾や不条理など、社会派の要素を多く含んでいる。

特に『ミセン-未生-』は、ロマンス要素のないドラマもヒットできることを証明し、韓国ドラマの脱・ロマンス化を進めた。『冬のソナタ』時代から続く現実離れしたラブストーリーに多くの視聴者が疲労を感じていたことは明白だった。

今、多くのドラマファンが作品に求めているのは、共感できるリアリティである。一般的に弁護士という存在自体が、身近になってきているという社会的背景も影響しているのかもしれない。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』韓国版キャラクタービジュアル

昨今、不倫やお金のトラブル、パワハラ、セクハラなどの問題が社会を賑わせており、ワイドショーや情報番組で専門家としてコメントを求められ、弁護士が登場することも多い。このような問題を耳にすることによって視聴者がトラブルを自分に置きかえて“身近な問題”と認識するようになったのだろう。

制作サイドの脚本家としても、社会のあらゆる分野で活動する弁護士を主人公にすることで、政治、企業問題、貧富の差、医療、男女トラブル、障がい、LGBTQ問題など、幅広い社会問題​を​題材として扱える。また、主人公や依頼人に視聴者を代弁させることもできるし、悪を懲らしめる痛快な展開を繰り広げることも容易になるだろう。

大衆の虚を突く論理で正義を弁護する主人公。

事件を解決する過程は多少現実味に欠けても、そんな劇的な演出には視聴者も寛大だ。まるでヒーローのように弱者に寄り添う主人公を応援したくなるし、痛快さも味わいたい。

弁護士ドラマで繰り広げられるのは、いわゆる勧善懲悪の世界で、結局は善が悪を懲らしめるという“わかりやすいストーリー”がウケているのだ。

​弁護士を主人公にする制作サイドの​メリットは他にもある。軸になるのが「人物」と「事件」のどちらでも表現の幅を広げられることだ。

主人公の成長にフォーカスを当てた『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、自閉スペクトラム症という設定を加えてかつてない弁護士キャラクターを誕生させた。一方、事件の解決によりフォーカスを当てた『ヴィンチェンツォ』は、悪者を懲らしめる主人公の豪快な手口に反響が集まった。

『ヴィンチェンツォ』韓国版キャラクタービジュアル

人物と事件のどちらをとっても物語を展開できるし、ロマンス、アクション、スリラーなどの要素も自由に取り入れられる。もちろん、どのように強弱をつけるかは脚本家の腕の見せどころだろう。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のようなメガヒットまではいかなくても、冒頭に挙げた作品はすべて韓国で平均以上の視聴率を記録した。弁護士は魅力的なキャラクターという認識が広まっている今、韓国ドラマの弁護士ブームはしばらく続きそうだが、はたして……。

文=李 ハナ

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