ヒットを超えた社会現象に!『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が韓国で大ウケした理由

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Netflixで配信中の韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(以下、『ウ・ヨンウ』)が連日TOP10の上位にランクインしている。もちろん韓国でも社会現象とも言えるほど爆発的なヒットを飛ばした。

【写真】『ウ・ヨンウ』女優パク・ウンビン、爽やかな魅力が“爆発”!

その人気ぶりは、視聴率を見れば一目瞭然。初回0.948%でスタートした視聴率は回を重ねるごとに伸びていき、第7話で11.690%と2桁に乗り始め、第9話で15.780%、最終回は自己ベストの17.534%で有終の美を飾った。

この視聴率がさらにすごいのは、『ウ・ヨンウ』の放送局である「ENA」があまり知られていないチャンネルだったことだ。ゲーブルチャンネル「SKY」がリブランディングを行って2022年4月にローンチしたばかりだったが、『ウ・ヨンウ』の大ヒットにより一躍業界の注目株に躍り出た。

高視聴率ドラマでお馴染みの流行語もたくさん生まれた。特に劇中で主人公が親友トン・グラミ(チュ・ヒョニョン)と交わす、「ウ to the ヨン to the ウ」「トン to the グ to the ラミ」とラップのようにお互いの名前を呼び合い、独特な動きを交えながらするあいさつは韓国芸能界でも大ブーム。BTSやSEVENTEENなど、アイドルグループのメンバーたちがその真似をする動画が大きく話題になった。

では、なぜ今、『ウ・ヨンウ』なのか。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』韓国版キャラクターポスター(画像=AStory、KT StudioGenie)

善人でも悪人でもない人物たち

その人気の理由としてまず挙げられるのが、魅力的なキャラクターたちだ。

主人公のウ・ヨンウ(パク・ウンビン)は自閉スペクトラム症を持っており、人と目を合わせられなかったり、挙動不審だったりする。ただ、タイトルからも分かるように彼女は驚異的な記憶力を持つ「天才肌」だ。既成概念を打ち破る斬新なアイデアで裁判の流れを変えるその活躍ぶりは痛快で、快感すら覚える。ちなみに純粋無垢さを引き立てるボブヘアと大きな目も、たまらなく愛らしい。

そんなヨンウに惹かれるイ・ジュノ(カン・テオ)と、上司のチョン・ミョンソク(カン・ギヨン)は女性から圧倒的な支持を受けた。ジュノの場合はヨンウを思いやる優しい言動や、慎重に距離を縮めていく姿があまりにも罪深いということで、“有罪男”というあだ名がつくほどだった。

初登場でヨンウを妬む悪役かと思わせたミョンソクは、みんなの予想を覆す理想の上司ぶりで大反響を呼んだ。

彼は最初、「自己紹介もまともにできない」ヨンウの能力を疑い、偏見をあらわにする。しかし、事件の争点に気づいたヨンウを素直に褒め、自分の見方が甘かったと反省した。また、被害者に会いにいくヨンウに「社員を同行させる」と配慮しながらも「普通の弁護士でも難しいことだから」と余計な一言を添えた時も、すぐに失礼さに気づいて謝る姿勢を取る。第1話のこのやりとりは、多くの視聴者を惹きつけた珠玉のワンシーンとなった。

(画像=AStory、KT StudioGenie)

ヨンウの才能に嫉妬を覚えながらも不器用なヨンウがほっとけないチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)と、自分なりの理屈を持ってヨンウにライバル心を燃やすクォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)も、ただの脇役とは言えない存在感を発揮した。脚本家のムン・ジウォン氏によると、この2人はヨンウに対する大衆の反応のうち、最も興味深い2つの反応を代表するキャラクターなのだという。

すべての登場人物が、絶対的な善人でも絶対的な悪人でもないこともこのドラマの特筆すべき強みだろう。

だからこそ、どのキャラクターも共感できる部分と拒否感を覚える部分がある。ヨンウが勤める法律事務所が一見「夢のようないい会社だ」と思える一方で、「案外これが普通なのでは?」と思わせるのもそのためだ。『ウ・ヨンウ』の登場人物一人一人には、視聴者をすんなりと劇中世界にのめり込ませる魅力がある。

パク・ウンビンの圧巻の演技力

(画像=AStory、KT StudioGenie)

放送開始早々、口コミで評判を広げた最も大きな要因として、自閉スペクトラム症のキャラクターを見事に演じた女優パク・ウンビンの存在も欠かせない。

ウ・ヨンウを演じることに負担を感じて何度もオファーを断っていたそうだが、制作陣は「パク・ウンビンにしかできない」として1年かけて彼女を説得し、撮影スケジュールも彼女に合わせたそうだ。

その期待に沿うかたちで、パク・ウンビンは芸歴24年の集大成とも言える圧巻の演技力を披露した。真摯な姿勢でキャラクターに向き合った彼女の演技は、自閉症の特徴を伝えながらも、視聴者が受け入れやすいように徹底して計算されたものだった。

制作陣の真摯な姿勢

(画像=AStory、KT StudioGenie)

『ウ・ヨンウ』を手がけたユ・インシク監督は、人気の秘訣について「自閉症の人をはじめとするマイノリティに対する大衆の感受性と、優しい物語への渇きというのが、ドラマを作る人々の先入観を遥かに超え、大衆の心の中にすでに定着していたんじゃないかと思う」と語っている。

ここ数年、韓国ドラマは不倫や復讐など、刺激的な素材を扱う作品が主流になっており、法廷ドラマも残忍な凶悪事件を描くものがほとんどだった。

しかし、『ウ・ヨンウ』は違う。あくまでも自閉スペクトラム症を持つ人物が社会の偏見を乗り越え、弁護士として成長する姿にスポットを当てた。その成長の一助になる各エピソードの依頼人も、老年女性から性少数者、脱北女性など、社会的マイノリティが多かった。

もちろんドラマならではの偶然頼みやファンタジー的な描写も存在する。それでも『ウ・ヨンウ』が多くの人に受け入れられたのは、単にマイノリティの苦痛を再現することだけにとどまらなかったからだ。

マイノリティを取り巻く偏見と苦痛を見せながら、見ている側もそのような偏見に囚われてはいないか振り返らせる。実際、韓国では自閉スペクトラム症や障がい者に関する話題がよく取り上げられるようになり、人々の意識改善はもちろん、関連政策やビジネスも増えるものと見込まれている。

それは『ウ・ヨンウ』がバランスの取れた視線と前向きなビジョンを示してくれたおかげだろう。温かい眼差しを持つ制作陣と、キャラクターに真摯に向き合った俳優たちが作り出した“奇跡”なのかもしれない。

『ウ・ヨンウ』の関係者は先日、シーズン2の制作を前向きに検討していると明かした。『イカゲーム』や『梨泰院クラス』のような刺激的な物語に強い韓国ドラマだが、今後は『ウ・ヨンウ』のような”優しいドラマ”が増えることも期待したい。

文=李 ハナ

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