ドラマ『二十五、二十一』は脚本が秀逸だった。巧みなストーリー展開、性善説に基づいたキャラの描き方、終盤にかならず挿入される名場面の数々……次の回を絶対に見たくなる構成力は見事だった。
そして、優れた脚本を実際に映像に仕上げた演出力と演技力も称賛に値する。まさに「総合芸術」。才能あふれる人たちの英知が結集して『二十五、二十一』は傑作になった。
中でも、「究極の1人」を挙げていいなら、ヒロインのナ・ヒドを演じたキム・テリをぜひ取り上げてみたい。
もしも……と仮定をしてみるとよくわかるが、もしもナ・ヒドを他の女優が扮していたら、『二十五、二十一』はこれほど感動を生むドラマになったかどうか。
とにかく、物語の冒頭からキム・テリの演技力に圧倒された。
彼女が扮したナ・ヒドは、フェンシングの強豪校に転校するために高校生では思いもつかない奇策を次々に繰り出すのだが(たとえば乱闘参加やクラブ嬢体験など)、画面からはみ出すほどの生き生きした存在感は、まさにキム・テリの演技力の賜物であった。
それ以外にも、様々な場面が甦ってくる。
・借金取りの取り立てに落ち込むペク・イジンを励ました蛇口噴水操作の場面
・貸本を破いてしまい自分で漫画を描いてペク・イジンに泣きついて逃げる場面
こうした場面で見せたナ・ヒドの天真爛漫ぶりは、キム・テリが創造してその後のドラマの牽引役となった。
彼女は1990年4月24日に生まれている。つまり、31歳で高校生を演じたわけだが、これほど「自然に」「ハツラツと」「明るく」高校生を演じられる30代が他にいるだろうか。
安易に使うべきではない「天才」という表現を、キム・テリの場合はやはり使いたくなってしまう。
さらに、『二十五、二十一』ではフェンシングの競技がしばしばドラマの重要な場面になったのだが、ナ・ヒドが見せるフェンシングの俊敏な動きは本当に絵になっていた。キム・テリもよほど鍛錬に明け暮れたのだろう。その成果が映像から伝わってくる。
間違いなく、キム・テリが作った演技の世界を通して、『二十五、二十一』はこんなにも輝いていき、終生忘れない余韻を残してくれた。そのことだけは絶対に忘れない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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