韓国時代劇をずっと見ていると、史実に基づいて重厚な作風を持つドラマもあれば、奇想天外な展開でとことん視聴者を楽しませてくれるドラマもある。
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後者の代表的なものは、『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』や『哲仁王后』のようにヒロインが現代から過去にタイムスリップしてしまうもの。ありえない話なのだが、そんなふうに意表を突く展開はドラマが持つファンタジーな要素を際立たせてくれて面白い。
そして、もう一つのパターンが女装・男装モノである。
こうした風変わりな設定は、意外と傑作が多い。たとえば、パク・ミニョンが演じたヒロインが女子の受験が認められない成均館(ソンギュングァン)の入学をめざす『トキメキ☆成均館スキャンダル』、キム・ユジョンが演じたヒロインが去勢された男子が対象の内侍(ネシ/王室の秘書や護衛を受け持つ官僚)になるという『雲が描いた月明り』などが大ヒットしている。
さらに、主人公ノクドゥが男子禁制の村に忍び込んで犯人捜しを始めるという物語だったのが『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』で、チャン・ドンユンが妖艶な女子を演じて仲間との沐浴から逃げ回るという場面が爆笑を誘っていた。
このように、風変わりな女装・男装するという展開は時代劇で繰り返し創作される物語なのだが、その背景には何があるのだろうか。
これは、「時代のタブー」を生かした物語設定なのである。
朝鮮王朝時代の「タブー」といえば、強固な身分制度であった。特に、男尊女卑が顕著で、女性は制度のうえで様々な制約を受けていた。具体例を挙げれば、「学問を受ける資格がない」「官僚になる権利がない」「再婚する自由がない」など。理不尽きわまりないのだが、それが儒教を国教にした朝鮮王朝の限界であった。
それゆえに、女性に対して様々なタブーが生まれてしまったのだが、そんな風潮をひっくり返すように、時代劇では女性が様々な社会進出を成し遂げるという意味での男装物語が創作された。さらには、逆手をとって女性だけの世界に男性が潜り込むという『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』が生まれたのである。
この設定は今後の時代劇でも大いに重宝されていくだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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