イ・ビョンホンが主演した映画『王になった男』は傑作だった。それまで、ドラマと違って映画の時代劇は「なかなかヒットしない」と言われていたのに、この作品は観客1000万人を突破して破格の大ヒットを記録した。
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私(康熙奉)は日本で公開されるときに配給会社に依頼されて歴史解説を担当した。そのために各場面を詳細に見たが、イ・ビョンホンが光海君(クァンヘグン)の苦悩を本当に巧みに演じていた。彼の存在感があってこそ、映画『王になった男』は素晴らしい評価を得ることができたのだ。
この作品が2012年で、その7年後にテレビドラマにリメイクされることになった。主役を聞いて驚いた。ヨ・ジングだったからだ。
もちろん、彼の天才子役ぶりはよく知っている。『太陽を抱く月』ではキム・スヒョンの子供時代に扮して世子(セジャ)の役を担っ
たが、キム・ユジョンが演じた世子嬪(セジャビン)を失う場面で見せた悲しみは大人顔負けの名演技だった。
以後も子役として数多くのヒット作で活躍したあと、大人の俳優として確実な成長を見せていた。共演したチャン・グンソクが「ヨ・ジング氏は恐ろしい俳優です」と語っていたことも強く印象に残った。
このように、ヨ・ジングは並の俳優でないということを承知していたのだが、ドラマ『王になった男』の主役を演じるときはまだ22歳だった。
「いくらなんでも若すぎるのでは」
それが率直な感想だった。
しかし、実際にドラマ『王になった男』を見たとき、「一般的な常識が通用しない俳優なんだな」と思うしかなかった。「若すぎるから」とか「主役として荷が重い」とか「1人2役の難しい演技が大丈夫なのか」といった常識的な疑問はヨ・ジングには通用しないのだ。
「光海君」という人物は歴代国王の中で特に難しい性格なのだが、ヨ・ジングは『朝鮮王朝実録』という正式な歴史書が描く世界にタイムマシンで入り込んだかのように、謎めいた国王を臨場感たっぷりに演じきった。しかも、道化師のハソンに扮したときは彼の不安や猜疑心を顔の細かい表情や声で的確に再現していた。
『王になった男』以後も、ヨ・ジングの天才ぶりはいかんなく発揮されている。誰もが『怪物』で見たとおりだ。演技派ぞろいの韓国俳優の世界でも、ヨ・ジングはすでに一目置かれた存在になっている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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